研究課題
北海道浦河・穂別地域の蝦夷層群,岩手県の久慈層準,福島県の双葉層群,茨城県の那珂湊層群等で野外調査を行い,シーケンス層序の検討,大型化石,砕屑性ジルコン年代試料の採取も行い,一部は年代測定を行った.久慈層群ついてはこれまで検討してきたシーケンス層序を大型化石層序との対比から再検討し,堆積史モデルを構築した.双葉層群では,海生爬虫類の産出記録をまとめ,今後の検討課題を整理したが,年代測定に有用な凝灰岩鍵層は見いだすことができなかった.那珂湊層群については,異常巻きアンモナイト主体の動物化石相の全容を把握して化石層序を日本の他地域の同時代層と比較した.さらに,本学や幾つかの他機関の標本を観察し,那珂湊産アンモナイトの古生物記載を行い,化石層序の内容と合わせて,国際誌に論文投稿した.一方,日本列島の白亜紀の古地理や地史の全体像を復元するために,地質情報収集と文献調査を行い,火成岩(深成岩,火山岩),堆積岩,付加体等の白亜紀の地質体について分布やその意義を総合的に検討した.火成岩については,この数年に出版された放射年代値記録を網羅的に調べ,東北日本-西南日本間の違いやそれぞれでの特徴を把握し,白亜紀火山弧における火成活動の概要や特徴を把握した.また,堆積岩類については,北海道を除く計48地域の個々の地層における年代層序情報を収集し1600 km以上におよぶ広域地質柱状対比図を構築した.そして,東北日本太平洋岸から西南日本の秩父帯に分布する白亜系には,連続的な層序と類似した堆積相が改めて確認された.こうした白亜紀地質体の分布から,日本海拡大前の東北日本と西南日本は直線的な陸弧をなしており,その海洋側には一連の白亜紀前弧堆積盆が連続していたことが推定された.
2: おおむね順調に進展している
本年度の現地調査を通して,これまでの研究で不充分・あるいは明確でなかった幾つかを,検討・確認することができ,研究成果の精度や完成度の向上ができた.特に,那珂湊層群の成果は,年度内に国際誌への論文投稿まで進めることができ,現在は査読過程にある.一部は学会発表した内容を,茨城県自然博の研究報告に発表することができ,着実に成果を公表できている.一方,日本列島の白亜紀の古地理や地史の全体像復元は,多数の最新文献の掌握ができ,研究の現状が分かってきたので,安藤の進めてきた成果を再評価することができるようになった.
日本の白亜紀の古地理・地史の全体像復元については,この数年,研究の進展が早く多数の文献や情報があり,その把握は容易でない.そのため,今後も継続的に進めていく必要が分かった.また,研究協力者だけではなく,関連する研究者との交流や情報交換も進めて,重層的な検討や考察に資する必要がある.一方,日本だけでなく,東アジア各国でも白亜紀の地質体の研究が急速に進んでおり,特に放射年代測定値が多数報告され,それに基づくさまざまな視点の地質復元やモデルが提案されている.その一部は,玉石混淆の感があり,中には日本の地質情報が活かされていないために片手落ちになっているのが散見される.したがって,早期に論文公表して情報発信していく必要性がある.
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Island Arc
巻: 27 ページ: 1-17
10.1111/iar.12243
化石
巻: 102 ページ: 43-62
茨城県自然博物館研究報告
巻: 20 ページ: 7-14
http://paleogeo-ando.sci.ibaraki.ac.jp/