研究課題/領域番号 |
17K05690
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
栗原 敏之 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10447617)
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研究分担者 |
植田 勇人 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (70374197)
松岡 篤 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00183947)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 放散虫 / 生層序基準面 / ウラン-鉛年代 / ジルコン / 年代尺度 |
研究実績の概要 |
本研究は,放散虫化石帯を,他の生層序帯や地質現象を統一的な時間軸上に配列できる年代尺度として確立することを目的とする.平成29年度は,交付申請書の実施計画に則り,次の検討を行った.(1)飛騨外縁帯・黒瀬川帯の上部シルル系~下部デボン系放散虫化石帯における主要な生層準の年代の検討.(2)飛騨外縁帯・黒瀬川帯のペルム紀放散虫化石産出層における年代の検討.(3)北海道蝦夷層群における白亜紀放散虫化石産出層における年代の検討.(1)の結果,特に飛騨外縁帯の九頭竜湖-伊勢川上流地域における下部デボン系の放散虫化石帯において,複数層準の凝灰質岩からジルコンのU-Pb年代(約400 Ma)が得られた.この年代値は,これまで化石による対比から推定されていた相対年代と非常に調和的な結果である.(2)では,飛騨外縁帯・黒瀬川帯でペルム紀の放散虫化石が報告されている層序断面における凝灰岩・砂岩についてジルコンのU-Pb年代を測定し,それぞれ約280 Maおよび約260 Maの年代値を得た.これらの年代分布はピーク幅の狭い単峰型を示すことから堆積年代として捉えられ,今後,同様の岩相を検討することでペルム紀の放散虫化石帯に年代値を導入できる見通しが得られた.(3)では,白亜紀AlbianからConiacianの放散虫化石が産出する新冠地域と浦河地域の蝦夷層群において,挟在する凝灰岩層5層準についてジルコンのU-Pb年代を測定した.その結果,約100 Maから約87 Maの年代値が得られ,Albian/Cenomanian境界付近からTuronian~Coniacianの放散虫群集の産出層準に数値年代を導入することができた. なお,U-Pb年代の測定手法については,研究分担者(植田勇人)による論文がGeochemical Journalに受理され,現在印刷中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は「研究の目的」に記載した対象とする化石帯の時代のうち,古生代シルル紀~デボン紀およびペルム紀,中生代白亜紀について重点的に検討を行った.特に,シルル紀~デボン紀については,従来の研究で問題となっていた年代分布におけるブロードな年代ピークに対し,ピーク分離等の統計学的手法とともに個々のジルコン粒子の組織や形状の評価も進め,より信頼度の高い堆積年代値を提示することに成果を得た.この結果については,日本地球惑星科学連合2018年大会にて発表予定である(佐藤・栗原,U-Pb zircon ages from Devonian tuffaceous clastic rocks in the Kuzuryu Lake-Upper Ise River area of the Hida Gaien belt, central Japan).ペルム紀については,黒瀬川帯のペルム紀付加体にて,放散虫化石を産出する層序断面中の砂岩より約260 Maの年代値が得られた.このデータの一部については,論文として公表された(Hara et al., 2018).白亜紀については,放散虫化石の産出する層序断面に挟在する凝灰岩のジルコン年代を得ることができており,特に後期白亜紀Cenomanian~Coniacianについては年代尺度としての一定の有用性を確立することができた.この成果については,2017年10月22日~27日に行われた15th INTERRAD(The 15th Meeting of the International Association of Radiolarists)にて発表した(Ito et al., 2017).
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究実績で記した通り,シルル系~デボン系放散虫化石帯の主要な生層準に年代値を与えることに関しては,特に飛騨外縁帯での検討により一定の成果を得ることができた.平成30年度では黒瀬川帯と南部北上帯のシルル系~デボン系について,当初の実施計画の通り,検討を進める.これらの検討対象の一部については既に試料採取が済んでおり,速やかにLA-ICPMSによるU-Pb年代の検討を行う.ペルム紀については,凝灰岩からジルコンのU-Pb年代が得られた飛騨外縁帯のペルム系にて系統的な年代値取得を進める(この結果の一部は,鈴木・栗原により日本地球惑星科学連合2018年大会にて発表予定である).特に,下部ペルム系については,平成30年度中に完了を目指す.また,中~上部ペルム系については,平成29年度中に舞鶴帯の層序断面にて放散虫と凝灰岩中のジルコンを予察的に検討することができており,平成30年度中にデータを得られる見込みである. 中生代ジュラ紀の放散虫化石帯については,当初計画では高知県仁淀町のセクションにて検討を進める予定であったが,地層の露出状況が良好ではないことから,新たに福島県南相馬地域のジュラ系-下部白亜系の層序断面を対象に,凝灰岩のジルコン年代を得ることを予定している.なお,この層序断面については,研究分担者(松岡 篤)が既に詳細な岩相層序の検討を行っており,速やかに検討を行うことができる状況である.白亜紀の放散虫化石帯については,平成29年度に検討を行った北海道蝦夷層群新冠地域における後期白亜紀Cenomanian~Coniacianの放散虫化石・ジルコン年代のデータをまとめ,論文化を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度中(平成30年2月~3月)に予定していた5試料分のLA-ICPMSによるジルコンのU-Pb年代の測定を,平成30年度に行うことに予定を変更した.そのため,この分析にてLA-ICPMSで使用する予定であったアルゴンガス・ヘリウムガスの額が次年度使用額として生じた.翌年度では当初の予定と同じく,アルゴンガス・ヘリウムガス代として使用する計画である.
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