研究課題/領域番号 |
17K05691
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
天野 和孝 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (50159456)
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研究分担者 |
ジェンキンズ ロバート 金沢大学, 自然システム学系, 助教 (10451824)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 暁新世 / 沈木群集 / 進化的意義 / 活平層 / Basilica層 |
研究実績の概要 |
研究計画に沿い、北海道浦幌町の暁新世の地層である活平層分布域で未調査地域の調査と炭酸岩の産状を検討した。また、中川町の白亜紀の沈木群集の再調査を行い、化石を採集した。その結果、グリーンランド、デンマーク産の腹足類に類似した新種を発見し、記載した。一方、中川町の白亜紀の沈木群集は発見できなかったが、化学合成群集に含まれるハナシガイ科化石を採集した。さらに、これまでの成果をまとめ、合衆国ウッズホール研究所で開催された国際シンポジウム、ポーランドのクラクフ工科大学で行われた国際学会で発表した。その後、ポーランド古生物学研究所に3週間滞在し、Spitsbergen島の暁新世の地層であるBasilica層産の沈木群集化石をDr. Hryniewiczと共に検討し、活平層の沈木群集と比較した。その結果、両層の沈木群集は科レベル以上での構成は類似すること、属レベルでは異なることが明らかとなった。特に、二枚貝のハナシガイ科について活平層ではハナシガイ属が卓越し、Basilica層ではオウナガイ属が見られる点で異なる。また、二枚貝の原鰓類では活平層ではクルミガイ科のキララガイ属、クルミガイ属などが卓越するのに対し、Basilica層ではロウバイガイ科のキビソデガイ属が卓越する。さらに共通点として、腹足類のハイカブリニナ属や新生代型二枚貝のシンカイヒバリガイ類、オトヒメハマグリ科を含まないことも確認された。原鰓類の違いについては、Spitsbergen島の当時の気候が寒冷であり、より浅海のためと考えられ、ハイカブリニナ属を欠く点も両地点が水深500mよりも浅いことで、説明可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、調査を行い、北海道の暁新統活平層とSpitsbergen島の暁新統Basilica層の沈木群集の種構成や産状を比較できた。その結果、両者の共通点や相違点が明確となり、その要因についても、ある程度考察できた。これまで1地点のみからの報告があった中川町の白亜紀の沈木群集の採集を試み、化学合成群集に見られる種を採集できた。次年度は再度、その近傍で化石採集を試みる。また、これらの成果の一部を国際シンポジウム等で発表し、情報交換を行うことができた。以上から、計画は概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
ポーランド古生物研究所のDr. Hryniewiczを上越教育大学に招き、これまで活平層で採集した化石について再度検討すると共に、北海道活平町を調査し、炭酸塩岩の産状、活平層の沈木群集の産状や種構成などについて現地で議論する。また、再度、白亜紀の沈木群集の調査を前年に化学合成群集の構成種を発見した地点付近で再調査し、炭酸塩岩の産状、酸素同位体比の検討を行う。さらに、採集された化石をまとめ、活平層とBasilica層のリストを作成する。こうした成果を第5回国際古生物学会(パリ)と日本古生物学会で発表すると共に論文として積極的に公表する。
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