研究課題
研究計画に沿い、ポーランド古生物学研究所のDr. Hryniewiczを上越教育大学に招き、これまで北海道の暁新統活平層から採集した標本について意見交換を行った。また、一緒に北海道浦幌町の活平層の化石の産状や種類を補足調査し、Spitsbergen島の暁新世の沈木群集との産状の比較、種構成の相違などを詳細に検討し,記載した。その結果、Spitsbergen島の群集と科構成は類似するものの、属構成は異なることが明確となった。特に,Spitsbergen島からはキビソデガイの新種とオウナガイ属が多く, 活平層から多産するモミジソデボラ科はわずかしか産出しないことが明らかとなった。その違いは水深、古気候の違いと近傍でのメタン湧水の有無によるものと考えられる。さらに、グリーンランドやデンマークから報告されていた腹足類Boreocomitas属の新種を発見し、グリーンランドやデンマークの種との類似性から暁新世においてベーリング海峡が存在した可能性を初めて示唆した。活平層の沈木群集中には新種を含む中生代の生き残りの9種・属が見られ、5種の最古の化石記録が認められたため、これまで採集されている沈木群集の種様子のリストを作成し、記載論文化した。生き残りの要因としては,深海域には中生代末の隕石衝突の影響が及ばなかったためと考えられる。生き残り種の中にツキガイ科の二枚貝があり, それと関連して生き残りの種が多いニュージーランドの中新世のメタン湧水サイトから採集されていた同科の種の再検討も行った。さらに、これらの成果をパリで行われた第5回国際古生物学会で発表するとともに日本古生物学会で発表した。
2: おおむね順調に進展している
計画通り、Dr. Hryniewiczを上越教育大学に招き、これまで活平層で採集した標本類とSpitsbergen島のBasilika層で採集された群集との比較について議論ができた。また、一緒に、北海道浦幌町の活平層の化石産状を確認し、Basilika層との違いについて情報交換を行った。その結果、両者の共通性や相違点がより明確となった。また、これらの成果の一部を国際学会や国内の学会で発表することにより、他の研究者と情報交換ができた。以上から、計画は概ね順調に進展していると判断できる。
最終年度にあたり、平成30年度までに作成されたリストをもとに、暁新世の沈木群集の組成、構造と産状の特徴をまとめる。また、白亜紀や後期始新世から前期漸新世の沈木群集との群集組成、構造の違いを明らかにし、古生物地理学的、進化学的な観点を加味しながら暁新世の沈木群集の進化学上の意義について明らかにする。さらに、これまで得られた研究成果を国際ワークショップや古生物学会で発表し、情報交換を行う。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件)
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