研究課題
研究計画に沿い、平成30年度までに作成されたリストをもとに、暁新統活平層産沈木群集の組成をまとめた。その結果、45産地から75種の軟体動物、2種の腕足動物、2種の単体サンゴ、ウミユリの仲間とフジツボの仲間を1種同定した。その結果、Kangilioptera inoueiと原鰓類が卓越する事が明らかとなった。化学合成群集特徴種としてはMyrtea ezoensis, Thyasira oliveriが含まれることも明らかとなった。こうした特徴は白亜紀の北海道の沈木群集と類似している。また、活平層の群集には白亜紀の残存種が多く含まれることが判明し、これまでに判明した9種に加え、新種であるProcardia inoueiを発見した。Procardia属は白亜紀に栄え、北半球の新生代の地層からはこの種が唯一の種であることも明かにした。比較すべき化学合成群集として、日本海側最古の化学合成群集を発見記載し、始新世以降特徴種となるオトヒメハマグリ科の古生物地理についてまとめた。さらに、作成されたリストに基づき、沈木群集の食性構造、多様性の関係を明らかにした。その結果、植物食者であるKangiliopteraが多いと多様性は低く、堆積物食者である原鰓類が多いと多様性が高くなることが明かとなった。これは、群集の生態学的遷移を示し、沈木片が海底面上にある時には植物食のKangiliopteraが卓越し、沈木片が埋もれた場合には周囲の有機物に依存する原鰓類が多様化するためと考えられる。これらの成果に基づき、日本産化学合成二枚貝の属の生存期間や生物地理の観点から3グループにまとめ、これらの環境変動との関係を明らかにし、国際学会で発表した。
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