研究課題
今年度は、相模湾の漸深海帯で採取した有孔虫種について、連続切片観察による細胞3次元構造解析、そしてその構造の機能を推定するための各種実験を行った。2017年6月および2019年9月に相模湾の漸深海底2地点から採取した表層堆積物の一部およびそこから拾いだした有孔虫個体に固定、染色を施し、樹脂包埋した後に厚さ500nmの連続厚切り切片を作成し、連続観察を行った。その後、特徴的な構造について画像解析ソフト上でトレースし、3次元立体構築してその細胞内での分布を明らかにした。この構造は概ね板状の構造をしていること、初室側、また細胞の縁辺部では、構造がさらに収縮し葉巻状に丸まった状態に変化することがわかった。この構造に対し、複数の化学染色手法を用いてその組成を調べた結果、キチン質でできた構造であることが分かった。この構造沿いに細胞質を展開していることから、細胞質の表面積を細胞内で増加させるための仕切り板のような構造の可能性があるほか、液胞の壁面沿いに展開されることもあることから、キチンの板を代謝反応の触媒として利用している可能性についても検討し、現在論文を準備中である。また、15Nで標識した硝酸塩、アンモニアを添加して培養した相模湾の別の有孔虫種について、研究協力者とともに15N濃度の面的マッピングを行い、好気的環境、嫌気的環境でどのように細胞内の窒素代謝に違いがあるのかを解析した。こちらも、研究協力者とともに論文としてまとめている。前述の9月の相模湾航海の他、12月―1月にかけて南極海でも堆積物試料採取を行い、いくつかの地点では世界でも初となる堆積物試料を得た。これら試料中の有孔虫についても、相模湾の個体などと同様の解析を進めており、昨年度までのアリューシャン海底谷やスウェーデンのフィヨルドなど多様な海域での有孔虫の貧酸素適応について検討し、その一般性と特殊性を明らかにしつつある。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件)
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