研究課題/領域番号 |
17K05698
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研究機関 | 神奈川県立生命の星・地球博物館 |
研究代表者 |
松本 涼子 神奈川県立生命の星・地球博物館, 企画情報部, 学芸員 (00710138)
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研究分担者 |
藤原 慎一 名古屋大学, 博物館, 講師 (30571236)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 四肢動物 / 首 / 進化 / 可動性 / 両生類 / 爬虫類 |
研究実績の概要 |
初期の四肢動物の後頭顆の形態は、ボール型と皿型に二分される。後頭顆の形態の違いは、関節の可動域や回転軸の位置の違いに反映され、四肢動物の運動様式の進化にも大きく影響したと考えられる。本研究では、ボール型と皿型、それぞれの後頭顆の機能的な特性を明らかにし、四肢動物の運動様式の変遷を系統的に議論する事を目的としている。 皿型の後頭顆をもつ現生平滑両生類と、ボール型の後頭顆をもつ爬虫類の検体を用いて後頭顆の可動範囲を検証した。各検体を4つの異なる姿勢(真っ直ぐ・側屈・背屈・腹屈・ねじり)に置き、μCT撮像した後、頭部・第1~2頚椎を立体構築した。これらの三次元データから、後頭顆に対する第1・第2椎骨の可動範囲を調べ、グループごとの特性を比較した結果、平滑両生類では第1・第2椎骨のねじり・側屈運動が極めて制限されているのに対し、背屈・腹屈の動きに卓越することが明らかになった。これは、皿型の後頭顆が蝶番関節のような動きの制約を与えていると解釈できる。また、後頭部で可動範囲が制限される動き(ねじり・側屈)は、体骨格全体を用いて補っているものと考えられる。一方、爬虫類の第1・第2椎骨は主にねじりの可動性が高く、一部の種ではほぼ全ての運動(側屈・背屈など)にねじりが貢献していた。この結果から、ボール型の後頭顆は車軸運動を主に許容すると解釈できる。これによって、ボール型の後頭顆の爬虫類は、体幹から独立した頭部運動を効果的にしていることが分かってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の遂行に必要な平滑両生類および爬虫類のCT撮像データ、解剖データ等を概ね取得できた。また、昨年度課題となっていた、解析ソフト(voxelcon)の使用方法を習得する事ができたため、可動域の解析を行う事ができた。しかし、軟骨や筋を染色したCT画像の立体構築作業には予想以上の時間がかかっているため、本研究のもう一つの課題である「後頭顆の縦横比と首の筋の配置が可動性に及ぼす影響」の解析には、若干遅れが生じる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後、皿型の後頭顆である哺乳類と、ボール型の後頭顆の鳥類を新たに加え、これらの後頭顆と第1・2椎骨の可動範囲も両生類・爬虫類と同様に求める。また、解剖で得られたデータをもとに後頭部と頚椎のテコの計測を行い、筋や脊髄のひずみに及ぼす影響を調べる予定である。しかし、本研究課題を発展させた新たな課題(国際共同研究加速基金)に取り組むため、令和2年度は本研究を休止する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新たなデータを追加する必要性が生じたため、CT撮像費に使用。その他、助成金は、成果発表のため学会参加旅費、Adobeソフトの購入に使用予定。
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