研究課題
今年度は,フッ素雰囲気下でレーザー気化によりガラスキャピラリー管に封入された水をフッ素と反応させるときの問題点について検討した.レーザー気化によりガラスキャピラリー管中の水をフッ素と反応させることはできた.レーザー気化によりガラスキャピラリー管に穴が開くとフッ素がキャピラリーの中に入り,キャピラリー中の水と反応して,酸素が形成される.しかし,形成された酸素の圧力が外のフッ素の圧力と同じになると,キャピラリーの外のフッ素とキャピラリー内部の酸素の交換が遅いため,フッ素が液体の水と接触することが難しくなっている可能性がある.水とフッ素の反応を進めるためには,両者の反応を促進する方法を考える必要がある.研究期間内での結果は,(1)流体包有物の酸素同位体比を測定するために必要な水試料の量は,質量分析計の現状としては,CO2として最小で0.2μモル,できれば1μモルのガス量が必要であることが確認された.(2)反応を完全に進めるために,化学量論的な数値の5倍量のフッ素を試料室と二本の枝管(総有効容積4.0cm3)に入れると,フッ素圧は,0.06気圧となる.しかし,枝管中のフッ素は試料室内の反応に関しないので,実際の反応では,フッ素圧力を2~3倍高くし,0.5気圧程度にするとよい.(3)本研究では吸着水などの他起源の水の汚染の除去が大きな問題であった.流体包有物を抽出以前に,フッ素を試料室に満たしかなり長い時間を放置すると,水の汚染を0.1μモル程度までに抑制できることが確認された.しかしながら,石英をレーザー気化させたときにかなりの水が発生した.このことは,鉱物からの脱水による流体包有物以外からの水の汚染の可能性があることを示唆しており,流体包有物からの水を得るためにどれだけの鉱物量をアブレーションすればよいのかも含めて検討し,流体包有物からの水以外の水の汚染を減らす必要がある.
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 オープンアクセス 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
伊那谷自然史論集
巻: 23 ページ: 13-26
10.20807/icmnhr.23.0_13
Groundwater for Sustainable Development
巻: 16 ページ: 100719~100719
10.1016/j.gsd.2021.100719
Chemical Geology
巻: 586 ページ: 120559~120559
10.1016/j.chemgeo.2021.120559
Resource Geology
巻: 71 ページ: 123~143
10.1111/rge.12254