研究実績の概要 |
北部パタゴニア地方における中新世花崗岩の現地調査は,平成29年12月及び平成31年3月の2回,それぞれ2週間の行程(現地調査は5日間ずつ)で実施,岩石試料を日本へ移送した.令和元年度は,前年度末(3月末)到着の岩石試料(20資料40kg)を用いて,岩石薄片作製,顕微鏡観察,岩石記載,全岩化学分析等を進めた.前年度までのデータと合わせ,本研究地域に分布するPuerto Cisnes Granite (PCG), Queulat Diorite and Tonalite (QDT)の花崗岩類の多様性について議論を進めた. Sr・Nd同位体比初生値は,SrI=0.70351~0.70412, NdI=0.51264~0.51 287と, 研究地域の花崗岩類のSrI, NdIの変化幅は小さい.一方,変堆積岩のSrIは他の岩体よりやや高い0.70525を示す.QDTとPCGの地球化学的特徴から,QDT中のmafic rockを起源物質としてモード溶融をしたモデル計算を行い,斜長石:角閃石:単斜輝石=5:4:1で約30%溶融させることでトーナル岩質マグマが生成されることが示された.また,PCG岩体の成因は,先行貫入している周辺岩体の中で比較的SiO2量が多いトーナル岩を親マグマと仮定し,SiO2量が最も高いS-type like rock(Kfs-bearing) を娘マグマとし,マスバランス計算によって得られた分別鉱物の割合を求め,レイリー分別モデルを用いたマグマの結晶分化の検討をしたほか,変堆積岩の混染によるAFCモデルでの検討を行った.その結果,,変堆積岩を約20%同化させ,斜長石:角閃石:黒雲母:ジルコン=53.41:41.90:4.47:0.13 の分別鉱物の割合で約40%分別することで,S-type like rockがトーナル岩よりもやや高いSrIを持つことが説明できた.
|