研究課題/領域番号 |
17K05701
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
伴 雅雄 山形大学, 理学部, 教授 (50208724)
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研究分担者 |
新城 竜一 琉球大学, 理学部, 教授 (30244289)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 火山噴火 / マグマ / 噴火史 / 浅部マグマ / マグマ混合 / 滞留時間 / 蔵王山 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、試料採取の補足を行い、平成29年度に開始した、蔵王山最新の五色岳山体の、約800年前以降の御釜を火口とする噴出物について、物質科学的分析と解析を進めた。同様の解析を昨年度系統的に採取した約2千年前~約800年前の噴出物についても開始した。約800年前以降の御釜を火口とする噴出物についての物質科学的分析と解析について以下に記す。 (1)斑晶のタイプごとの化学分析と晶出条件の推定:斜長石、直方輝石、単斜輝石の斑晶組織分類結果を基に、代表的なものについて化学組成分析を進めた。また包有物についても分析を開始した。解析結果を基に、同時に晶出したと考えられる部分の組成を基にRhyolite-MELTSによる解析を行い晶出時の温度、圧力、含水量条件を求めた。その結果、噴火に直接関係する浅部マグマ溜りは地下約6㎞の深さに存在していたが、かなり不均質であったことが推定された。 (2)直方輝石について、累帯構造を基にした分類及び注入から噴火に至る滞留時間を求める手順をさらに改善した。累帯パターンの分析を多数の粒子について行い解析を進めたところ、噴火に直結しない注入は噴火のおよそ50年前までは遡ること、噴火に直結する注入は数年以内であったことなどが推定された。 (3)全岩化学組成:XRFによる主成分と一部の微量成分の分析は昨年度にほぼ完了していたが、さらに試料数を増やした。また、約2千年前~約800年前の噴出物のうちの代表的なものについて琉球大学においてREEや同位体比分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、試料採取の補足を行い、平成29年度に開始した、蔵王山最新の五色岳山体の、約800年前以降の御釜を火口とする噴出物について、物質科学的分析と解析を進めると共に、同様の解析を昨年度系統的に採取した約2千年前~約800年前の噴出物についても進める予定としていた。各項目について進捗状況の点検結果を以下に記す。 試料採取については、平成29年度に実施したもので全体を網羅していると考えられるが、特に最新の御釜の噴火の噴出物について補足採取を行った。計画通りに進んでいる。 約800年前以降の御釜を火口とする噴出物の物質科学的分析について以下に記す。(1)斑晶組織分類・化学分析・生成条件の解析:斜長石、直方輝石、単斜輝石の斑晶組織分類を改善させた。各タイプについての化学分析と、各々の生成過程についての解析を進め、解析結果を基に同時に晶出したと考えられる組成を基にRhyolite-MELTSによる解析を行った。ほぼ当初の計画通り進んでいると考えられる。(2)斑晶滞留時間の解析:直方輝石について、斑晶リムの累帯構造の解析を進展させた。滞留時間を求める際にはMg#の初期プロファイルを求めることが必要となるが、当初の予定には含めていなかった拡散速度の遅いAlの累帯を基にするのが適切であることが前年度に判明したので、Alのプロファイルも同時に分析した。また、斜長石斑晶についても分析を開始した。ほぼ当初の計画通り進んでいると考えられる。(3)全岩化学組成分析を基にしたマグマの成因の解明については、XRFによる主成分と一部の微量成分の分析の試料数を増やした。その他の微量成分や同位体比分析については分析候補試料の選定を進め、代表的なものについて分析を開始した。ほぼ当初の計画通り進んでいると考えられる。 以上のように、本研究は当初の予定通りおおむね順調に進んでいると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、試料採取の補足を行い、平成29年度に開始した、蔵王山最新の五色岳山体の、約800年前以降の御釜を火口とする噴出物及び約2千年前~約800年前の噴出物について、物質科学的分析と解析を完成させる予定である。物質科学的分析と解析について以下に詳しく記す。 (1)これまでに主に約800年前以降の噴出物について完成させた斜長石、直方輝石、単斜輝石の斑晶組織分類を約2千年前~約800年前の噴出物に適用する。約800年前以降の噴出物について分析値数を増やし、それを基にこれまで求めていた同時に晶出したと考えられる部分の晶出時の温度、圧力、含水量条件を確かなものとする。また、各噴出物において存在タイプの割合を求め、その時間変化を解明し、マグマ進化過程を解明する。約2千年前~約800年前の噴出物についても約800年前以降の噴出物と同様の分析、解析を進める。 (2)主に約800年前以降の噴出物中の斑晶鉱物について滞留時間について検討を進める。直方輝石については、これまで検討してきた累帯構造を基にした分類及び注入から噴火に至る滞留時間を求める手順を基に、分析試料数を増やし結論を得る。また、単斜輝石、斜長石についても滞留時間についての分析、解析を進め、結論を得る。約2千年前~約800年前の噴出物についても約800年前以降の噴出物と同様の分析、解析を進める。 (3)約800年前以降の御釜を火口とする噴出物及び約2千年前~約800年前の噴出物について、XRFによる主成分と一部の微量成分の分析はほぼ完了しているが、補足的に分析を行う。その他の微量成分や同位体比分析を琉球大学の分析装置を用いて行う。 得られた結果を基に、学会発表を行うと共に論文作成も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に物品購入の際に残額が生じたため。
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