活性化する蔵王山の浅部マグマ溜りの詳細構造と噴火に至るタイムスケールの解明を行った。蔵王山最新の五色岳山体の、約800年前以降の御釜を火口とする噴出物及び約2千年前~約800年前の御釜東方の火口からの噴出物を対象とした。 約800年前以降の御釜を火口とする噴出物についての以下の(1)と(2)の成果を得た。また約2千年前~約800年前の噴出物についてもほぼ同様の結果を得た。(1)斑晶のタイプごと晶出条件の推定:斜長石、直方輝石、単斜輝石の斑晶組織分類を行い、また各タイプについて化学組成分析を行い進めた。得られたデータを基に、同時に晶出したと考えられる部分の組成を基にRhyolite-MELTSによる解析を行い晶出時の温度、圧力、含水量条件を求めた。その結果、噴火に直接関係する浅部マグマ溜りは地下約6㎞の深さに存在していたが、かなり不均質であったことが判明した。(2)直方輝石について、累帯構造を基にした分類及び注入から噴火に至る滞留時間を求める手順をさらに改善し、その方法によって、多数の粒子について測定した累帯パターンの解析を進めたところ、噴火に直結しない注入は噴火のおよそ50年前までは遡ること、噴火に直結する注入は数年以内であったことなどが判明した。 全岩化学組成を基に約800年前以降の御釜を火口とする噴出物及び約2千年前~約800年前の御釜東方の火口からの噴出物について検討し、次の(3)の結果を得た。(3)XRFによる主成分と微量成分の分析結果とSr同位体比分析を行った。その結果、御釜噴出物は、それ以前の噴出物とは、主成分と微量成分のうちK2O量やSr同位体組成が系統的に異なることが判明した。それは、両噴出物をもたらしたマグマの起源は異なることを意味している。両噴出物をもたらしたマグマ供給系の構造や機能は類似しているが、別々に発生したマグマが基になっていることが判明した。
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