研究課題/領域番号 |
17K05705
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
榎並 正樹 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (20168793)
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研究分担者 |
纐纈 佑衣 名古屋大学, 環境学研究科, 助教 (20726385)
加藤 丈典 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (90293688)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 変成岩 / ざくろ石 / EPMA / EBSD / 変形作用 / 結晶成長 |
研究実績の概要 |
本申請課題は,(1)組成累帯構造から判断して本来単結晶として成長していると思われていたざくろ石斑状変晶が多結晶成長する場合があることに注目して,三波川変成帯高温部におけるその様なざくろ石の産出と地質構造との関係を明らかにすることと,(2)セグメント化したざくろ石の結晶学的方位の相互関係より,変成帯上昇時の変形情報を読み取ることを主たる目的としている. 本年度は,まず(1)のテーマに関して,三波川帯高温部に認められる最も大規模な構造的不連続であるエクロジャイト・非エクロジャイト両ユニット境界付近の試料について系統的な研究を行った.具体的には,ユニット境界を横切るルートに沿って採取された変泥質岩中のざくろ石の組成累帯構造をEPMAにより系統的に分析し,包有物の分布なども参考にして多結晶体である可能性がある斑状変晶についてEBSDで分析した.しかし,いずれの結晶においても,多結晶体として成長したことを示すデータは得られなかった.これにより,Enami et al. (2017)によって報告された多結晶体ざくろ石斑状変晶は,当初の推測とは異なり,少なくとも三波川帯においてまれな例であり,おそらくはユニット境界形成のような特別な構造運動と直接関係して形成されたものではなく,それ以前のエクロジャイト相変成作用時にその原因が求められる可能性が高くなった. (2)のテーマについては,偏光顕微鏡観察により,ざくろ石がセグメント化し,なおかつその時の温度-圧力条件が少なくとも半定量的に推定できる試料を,中国・蘇魯超高圧変成岩,ミャンマー・Mogokグラニュライト,三波川帯エクロジャイトおよび三波川帯石英片岩から選び出した.そして,まずEPMAによる組成分析により組成累帯構造を明らかにするとともにセグメント時の条件を推定するための組成データを得た.そして,EBSDによる結晶方位解析を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従い,三波川変成帯における多結晶体ざくろ石斑状変晶の産出とその分布についての研究を開始したが,当初の予想とは異なり,新たな多結晶体ざくろ石を確認することはできなかった.そこで,予定を変更して申請時には2年目以降に行う予定であった,セグメント化したざくろ石の結晶方位分布についてのテーマの研究を開始した.このテーマについては,予備的分析結果から判断して,当初の計画に沿う研究を行うことができる見込みである.
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた2つのテーマのうち,「セグメント化したざくろ石の結晶学的方位の相互関係より,変成帯上昇時の変形情報を読み取る」ことに集中して研究を行う.これまでに,形成条件が異なる4試料を選んで研究を開始しているが,これにあわせて,研究分担者がこれまでに採取した試料のうちから目的に適した試料をさらに選び出して,変成帯の形成条件と特に上昇時のテクトニクスの関係を議論可能にするために必要なデータを得る予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額(繰越額)のうちの約12万円は,当初予定していたフィールド調査および試料採取に,日程の都合がつかなかったため出かけることができずに,使用しなかったものである.これは次年度に申請目的に沿って使用する予定である.なお,残りは間接経費の繰越である.
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