研究実績の概要 |
2018年度までに実施してきたケイ線石とFe酸化物を用いた相平衡再現実験から含水条件のもとで部分溶融した生成物にはFeAlO3相が結晶化しており,部分溶融していない生成物にはFeAlO3相は結晶化しておらず,Fe酸化物+ケイ線石+コランダムが再結晶化したことが明らかになっていたので,2019年度は,(1) FeAlO3相と共存するケイ線石中のFe固溶量の変化.(2) FeAlO3相へのTi固溶量の測定.(3)ケイ線石のFe含有量による体積変化の熱力学的解析.(4)ケイ線石-FeAlO3相の安定関係の熱力学的解析を実施した. これらの研究成果は,変成岩などシンポジウム2019,日本地球惑星科学連合2019年大会,日本鉱物科学会2019年年会・総会,日本地質学会第126年学術大会,2019 IAGR Annual Convention & 16th International Symposium on Gondwana to Asia, 第99回西日本東南極研究セミナーで公表した. 今回の研究成果でFeAlO3が超高温変成作用の温度圧力条件のもとで安定であり得ることを示したので,FeAlO3相がFeとAlに富み部分溶融の形跡を残した超高温変成岩類中で見出される可能性についてJournal of Mineralogical and Petrological Sciences, 114, 238-251詳細に言及した.この可能性を探るために,東南極リュツオホルム岩体に産する微斜長石ペグマタイト中の磁鉄鉱-チタン鉄鉱巨晶の詳細な記載岩石学的・鉱物化学的研究を実施した.FeAlO3そのものを見出す事ができなかったが,磁鉄鉱巨晶中に褐鉄鉱やTiーFeに富むコランダムを見出した(投稿準備中).このTi-Feに富むコランダムは,新鉱物の可能性があるので,今後詳細な結晶化学的研究を進めたい.
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