研究実績の概要 |
昨年度まで行ってきた雰囲気制御ケラマックス縦型管状炉をを用いた微粒子試料の落下・溶融実験によって、金属鉄および硫化鉄を主成分とする微粒子は、現在の地球高層大気を再現する低酸素分圧条件においても金属鉄の酸化が進行することが明らかとなった。酸化鉄が形成した粒子においては、溶融したI-type微小隕石に類似した、酸化鉄溶融相から成長した特徴的な樹枝状組織を示す磁鉄鉱の急冷結晶と、球粒状の溶融金属鉄相が共存している。酸化鉄溶融相からの樹枝状磁鉄鉱結晶の急速成長過程においては、磁鉄鉱結晶によって酸化鉄溶融相から酸素原子が奪われ、局所的な金属鉄相の形成という極めて過渡的な現象が起こることが見いだされた。 本研究で用いた、H2/CO2混合ガスによって酸素分圧を制御する系においては、温度に対応してH2, CO2, CO, H2O比が決まり、それらと平衡な酸素分圧が実現する。本実験条件においては、O2のモル比(酸素分圧)はCO2およびCOと比較すると極めて小さいため、試料の酸化還元挙動は主にCO2およびCO分子との反応によって規定されている可能性がある。微小隕石形成過程で生じる、低酸素分圧条件における金属鉄微粒子のごく短時間での酸化の進行には、O2以外の分子(CO2, CO)との衝突頻度がおおきな影響を及ぼしていることが示唆される。溶融微小隕石が通過する経路の長さを考慮すれば、低酸素濃度の大気であっても、金属鉄を酸化して磁鉄鉱急冷結晶などをもたらす量の分子CO2が存在しうる。 これは、I-type溶融微小隕石の組織、組成から地球高層大気の酸素分圧条件の変遷を解析する上で極めて重要な知見である。これらの成果は、国際学会を含む複数の学会発表として公表すると共に、Meteoritics & Planetary Science誌に投稿した。現在、査読コメントに対応して改訂を進めている。
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