研究課題/領域番号 |
17K05721
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
今栄 直也 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (60271037)
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研究分担者 |
堀江 憲路 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (00571093)
磯部 博志 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (80311869)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コンドリュールの形成環境 / ダストに富む原始太陽系 / 始原物質の蒸発と凝縮 / かんらん石と輝石の挙動 |
研究実績の概要 |
基盤研究(B)「圧力制御システムを用いたコンドリュールの凝縮反応に関する実験的研究」(平成23年度~平成26年度:今栄直也・代表)で導入した原始太陽系環境を再現する減圧制御炉にて作成したコンドリュールの再現生成物の主要元素であるMg, Si, Feの同位体測定を実施することが本研究基盤研究(C)の課題「クヌーセンセルを用いたコンドリュール再現実験生成物のMg,Fe,Si同位体比分析」の主目的である。実験では始原隕石を構成するI型コンドリュール組織・組成を再現した。実験はクヌーセンセル型の容器内部で行った。実験結果は、太陽系組成の出発物質が蒸発・凝縮を経てコンドリュール形成に至ることを強く示唆した。天然に産する還元的な鉱物組合せより構成されるI型コンドリュールはコンドリュールの最も主要な構成単位である。このMg, Si, Feの主要3元素には極めて小さい同位体分別しか認められていない。実験条件は、外との元素の交換は小さなオリフィスを通してのみしか行われないので、同位体分別を抑制することが期待できる。 本研究課題は実際にこの予測を検証して、コンドリュールの形成環境の理解を深めることである。現在、平成25年度に国立極地研究所に新たに導入した2次イオン質量分析計(SHRIMP II)を用いた実験生成物のSi同位体測定の準備は着実に進んでいる。当年度では、実験生成物の測定結果を得るには至らなかったが、標準試料(NBS=28)、Hamersley BIF, Dharwar BIF, Dharwar quartzite, Napier quartziteの30Siの測定を実施し、0.1パーミルでの高精度測定が可能になった。 他方、アメリカのNASAのジョンソン宇宙センターに2次イオン質量分析計(SHRIMP II)でのSi同位体測定用に、南極隕石申請を行った。この隕石は、最始原隕石に相当するDOM 08006 CO3.00で、研究計画が受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、国立極地研究所の2次イオン質量分析計(SHRIMP II)を用いて、コンドリュール実験生成物のMg, Si, Feの同位体測定を測定することにある。当該研究の研究分担者である堀江憲路助教は当装置運用の責任者であり、当分析を担っている。標準試料および地球産鉱物試料の測定により酸素の一次イオンビームを用い、特に質量が30のSiについて0.1パーミルの高精度測定が可能になり、測定手法を確立した。 本研究課題で測定予定の実験生成物の測定は、準備が整い次第測定予定である。また、始原隕石の測定も計画に導入しておりコンドリュールとマトリックスのデータを取得予定で打ち合わせを進めている。
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今後の研究の推進方策 |
最始原隕石に相当する隕石試料のSi同位体比測定が採択されているため,当研究課題の一つとして実施する。試料が到着次第早急に、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡およびエレクトロン・マイクロ・アナライザーで組織観察、主要構成鉱物組成の分析を行う。2019年度中に、Si同位体測定用のDOM 08006 CO3.00の2次イオン質量分析計(SHRIMP II)測定を実験生成物とともに実施し、比較を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画に明記されている通り、Mg,Fe,Siの大きな同位体分別は認められないと予測できる。一方、真空中で強度の過熱を受けた試料については大きな同位体分別が予測される。分析の進捗状況を見ながら、対照的な実験生成物として作成を検討している。最終年度にこの実験の可能性を残したために一部繰り越した。
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