研究課題/領域番号 |
17K05723
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
淀川 信一 秋田大学, 理工学研究科, 助教 (90282160)
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研究分担者 |
倉林 徹 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (90195537)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | サブミリ波 / 空洞共振器 / フィルタ / 特性可変 / テラヘルツ波 / 固体プラズマ / InSb / FDTD解析 |
研究実績の概要 |
本研究は,固体プラズマ材料と導波管空洞共振器で構成されたサブミリ波帯特性可変フィルタを実現することを目的としている. 初めに,理論解析による固体プラズマ材料のパラメータについて検討を行った.平行平板導波管の上下にプラズマとして作用するn-InSbを挿入した構造を想定して分散関係式を導き,それより電磁波の伝搬方向に対し横方向に磁界を印加した場合の伝搬定数を計算した.プラズマのキャリア密度や寸法について詳細に検討し,適当なパラメータにすることでサブミリ波の減衰が比較的少なく,伝搬波長が変化することが分かった. 次に,二次元FDTD(Finite-Difference Time-Domain)解析を利用して共振器の構造や寸法とプラズマのパラメータについて詳細に検討した.その結果,空洞共振器を導波管中の二つの結合金属スリットで構成した場合の各部の寸法や,プラズマ層の厚さに適切な値があることや,プラズマの電子密度が4-5×10^21 m^-3程度で共振器の特性が大きく変化することがわかった. 次いで特性可変共振器を実験で確認するために,実験に適した構造についてFDTD解析で検討した.その結果,空洞共振器としての影響は小さくなるが,金属スリットが無い場合でも共振器として動作することが示された.そこで,導波管に固体プラズマとして動作するn-InSb薄板を挿入したのみの構造について526 GHzのサブミリ波帯で実験を行った.その結果,印加磁界により透過電力が変化し特性可変の共振器としての動作の一端が示された.現時点では,単一周波数で印加磁界による共振特性の変化について検討を行ったが,今後は周波数特性について理論解析およびFDTD解析による検討を予定している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平行平板導波管に固体プラズマ薄板を挿入する構造についてFDTD解析を実施し,サブミリ波帯で動作する特性可変の共振器として利用できる特性が得られた.また,プラズマの厚さによる特性への影響で最適値が存在することが分かり,設計指針も明確になった.さらに,プラズマを利用したサブミリ波帯のリアクタンスフィルタなどへの展開の可能性など,今後の発展についても検討を始めている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は,前年度に詳細に解析により検討した構造の空洞共振器の周波数特性について検討を行う.また,周期構造を利用して特性の改善を試みる.また,リアクタンスフィルタや,その他の構造について三次元FDTD解析を行いさらに発展した共振器を構成する. その一例として多段のフィルタおよび多分岐のフィルタの特性を明らかにする.一つの共振器の特性を基に,多段にした場合のフィルタの帯域幅や中心周波数の変化に着目し,FDTD解析により適切な構造とその特性を明らかにする.さらに多分岐(マニホールド)型に構成した場合のフィルタ特性をFDTD解析により明らかにする.この場合,異なる中心周波数を持つ共振器を組合せ分波器として動作し,その中心周波数を変化しうることを明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
サブミリ波の検出器として,焦電効果型の比較的安価なものの購入を検討していたが,途中から高価ではあるが準光学型広帯域ショットキーダイオード検出器の可能性の検討を始めた.デモ機の貸出を含めそちらの購入を検討しており次年度繰越金が発生した.
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