研究課題
固体に高強度レーザーを照射した場合のプラズマ輻射流体コードによる運動論的な効果を考慮したシミュレーションコードの開発に着手した。すなわち、通常の流体シミュレーションでは、電子輸送は移流項と古典的な電子熱伝導項のみを考慮しているが、本課題ではプラズマ輻射流体コードに高速電子の影響を考慮したモデルを組み込むことによって、その適用限界を広げるための物理の把握とモデル化が研究対象となっている。平成29年度は主に以下の2点の開発作業を行った。高速電子発生のデータベース構築については、1次元電磁粒子シミュレーション(PIC)シミュレーションコードを利用して非線形レーザープラズマ相互作用のシミュレーションに着手した。特に、流体計算用に幅広いパラメータ領域でのデータベースを構築する必要があり多くの計算が必要である。一方で、流体シミュレーションとPICシミュレーションとの時間、および空間スケールが大きく異なることから、1次元計算にも関わらず比較的大規模計算が必要であることから、PICコードのデータ収集向けにする改良作業を行った。一方、輻射流体コードについては、これまでに開発済の非局所電子熱伝導モデルについて、多群拡散近似方程式を解くSNBモデルをベースに高速電子の外部ソースを与える手法について検討を行った。その結果、拡散の影響でやや等方的な伝搬をする傾向があることが分かった。境界条件の設定、あるいは高次の拡散モデル(M1モデル)の導入によって改善される可能性があることも分かった。これらを踏まえ、コードの改良を行った。特に、磁場の高速電子への影響を考慮するための開発も行った。
2: おおむね順調に進展している
高速電子の発生に関するデータベース構築については、1次元PICコードを本課題で必要となるデータの部分抽出方法の調整・開発に難航し、時間を要したことからデータベースの構築作業に着手する時期にも遅れが生じた。しかしながら、この作業については、次年度に集中的に行うことによって必要なデータの収集は可能であると見積もっている。なお、この遅れのため計算機資料料の一部が未使用となり、次年度へ繰り越すことになった。一方、ベースとなる輻射流体シミュレーションコードについては、当初は2年目に行う予定であったデータベースの組み込みのための準備作業は当初計画より順調に進んでいる。よって、これらの開発研究状況を総合的に判断するとほぼ計画通りに進んでいると言える。
非線形レーザープラズマ相互作用を1次元PICシミュレーションによって、高速電子の発生に関するデータベース構築作業を早急に行っていく。そのうえで、レーザーエネルギーの吸収、散乱、反射など輻射流体シミュレーションで必要となる物理量を取り込む簡易モデルを開発、構築する予定である。この組み込みには、輻射流体コードにおける熱伝導項の修正による数値的な問題が想定される。平成29年度に行った拡散モデル(SNBモデル)の組み込み時に、検証した範囲では比較的ロバストであることが分かった。このため、早い時期に組み込むとともに、一貫した統合シミュレーションのテストを実施したいと考えている。これらの計算には、前年度からの繰り越し分を加えた上で、大阪大学サイバーメディアセンターの計算機の使用時間を購入し、計算する予定である。
データベース構築のためのコードの調整に時間を要したため、計算資源を購入して計算する予定だった予算の一部が余り、次年度へ繰り越すことになった。次年度へ繰り越した分は、計算資源購入費として使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
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