研究課題/領域番号 |
17K05728
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
長友 英夫 大阪大学, レーザー科学研究所, 准教授 (10283813)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 輻射流体シミュレーション / レーザープラズマ相互作用 / 高速電子輸送 / 運動論効果 |
研究実績の概要 |
固体に高強度レーザーを照射した場合のプラズマ輻射流体コードによる運動論的な効果を考慮したシミュレーションコードの開発に着手した。すなわち、通常の流体シミュレーションでは、電子輸送は移流項と古典的な電子熱伝導項のみを考慮しているが、本課題ではプラズマ輻射流体コードに高速電子の影響を考慮したモデルを組み込むことによって、その適用限界を広げるための物理の把握とモデル化が研究対象となっている。平成30年度は主に以下の2点の開発作業を行った。 高速電子発生のデータベース構築のために、1次元電磁粒子シミュレーション(PIC)シミュレーションコードを利用して非線形レーザープラズマ相互作用のシミュレーションを行った。その結果、今回検討している数ピコ秒を超える比較的長時間の間に、誘導ラマン散乱、誘導ブレリアン散乱によって電子、およびイオンの密度分布が大きく変動することが明らかになった。これは、輻射流体コードとの結合の際は、サブピコ秒単位でミクロ-マクロ間のデータ結合を行う必要があることを意味している。モデルの簡素化、および輻射流体コード側との連結強化での対策を進めている。 輻射流体コードについては、これまでに開発済の非局所電子熱伝導モデルについて、多群拡散近似方程式を解くSNBモデルをベースに高速電子の外部ソースを与える手法について検討を行った。衝突項の影響を大きく受けることから、従来のBGKモデルを使ったSNBモデルを改良したAWBSモデルを使ったSNBに改良した。その結果、エネルギー保存性等で改善が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高速電子の発生に関するデータベース構築はシミュレーションコード整備、データ整理でやや遅れていたが、今年度着手し、データベース構築とともにモデル化にも着手した。流体運動との連結を考慮すると時間依存性を考慮しなければならない可能性がある。ただし、これは想定内の結果であり、今後は非定常性をどの程度厳密に輻射流体シミュレーションへ反映させないといけないのか評価を進め、時間平均した簡易モデル、および時間精度を有するモデルを並行して開発し、双方の特性を評価した上で計算対象に応じで使い分けることで対応することが可能である。 一方、ベースとなる輻射流体シミュレーションコードについては、非局所電子熱伝導モデルの精度向上などの進展が得られ、モデルと連結できる状態に仕上がった。 これらの開発研究状況を総合的に判断するとほぼ計画通りに進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、非線形レーザープラズマ相互作用を1次元PICシミュレーションによって、高速電子の発生に関するデータベース構築作業を行う。レーザーエネルギーの吸収、散乱、反射など輻射流体シミュレーションで必要となる物理量を取り込む簡易モデルの組み込みを行う。また、時間精度を高めた解析用のために時間依存モデルの開発、およびそのためのシミュレーションによるデータベース構築作業を引き続き行う。 このモデルを組み込んだ2次元輻射流体シミュレーションを実施し、妥当性の評価を行う。特に、誘導ラマン散乱、誘導ブレリアン散乱など、流体の時間スケールでも無視できない解農政のある現象をどの程度反映させる必要があるのかを評価することが重要である。計算例として、比較的実験結果の多い、超短パルスレーザーのプリパルスの計算を行い、比較検討を行う予定である。最後に、今後、高エネルギー密度科学に活用できるコードに仕上げるとともに、それらの結果をまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数が余ったため。次年度の物品費として使用する予定。
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