研究課題
本課題ではプラズマ輻射流体コードに高速電子の影響を考慮したモデルを組み込むことによって、その適用限界を広げるための物理の把握とモデル化が研究対象となっている。令和1年度は主に以下の2点の開発作業を行うとともに研究成果の整理、まとめ作業を行った。固体に高強度レーザーを照射した場合の運動論的な効果を考慮した輻射流体シミュレーションコードの開発について、これまでは高速電子成分を拡散近似的に考慮したSNBモデルを主に使っていた。しかし、計算負荷が少ない反面、高速電子の等方性が担保できない問題での妥当性が問題となっていた。そこで、今年度は非等方性が強い場合も扱えるようにM1モデルの導入を図った。従来のM1モデルは計算量の増大が問題となり、流体コードとの連携のネックになっていたが、陰解法化することによってその問題がほぼ解決した。一方、高速電子発生のデータベース構築のために、1次元電磁粒子シミュレーション(PIC)コードを利用して非線形レーザープラズマ相互作用のシミュレーションを行った。特に、長い密度スケール長で発生する誘導ラマン散乱について、それによって発生する高速電子スペクトルとレーザー吸収率を中心に調べた。その結果、高速電子スペクトル分布と誘導ラマン散乱光の密度スケール長との依存関係を明らかにした。その成果を米国物理学会プラズマ部会で発表するとともに論文化作業を進めている。ただし、流体シミュレーションの時間スケールでも無視できない時間依存性も見られることから流体シミュレーションへ矛盾なく組み込みための工夫も必要であることが明らかになった。なお、ここで明らかになった誘導ラマン散乱の特性は実験計測にも応用可能であることから、新たな計測手法を目指した研究にも着手した。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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