本研究では,蛍光分光表面力装置において蛍光プローブ法を用いることで,固-水界面におけるpH分布を評価した.また同試料系について表面力測定を行い,観測される電気二重層斥力から表面電位・電荷密度等の特性評価を行い,固-液界面におけるpH分布に与える影響について定量的に調べ,その機構解明を目指す. 具体的には,蛍光性pHプローブ色素(C.SNARF-4F)を溶解させた雲母表面間の水において,蛍光分光表面力装置によって蛍光スペクトルの表面間距離依存性を測定することで,pHの距離依存性を評価した.また、添加する電解質について、化学種およびその濃度を変化させて,その界面pHへの影響を調べた. また,同じ系について表面力測定を行って,観測される電気二重層斥力をPoisson-Boltzmann方程式により解析することで雲母の表面電位・電荷密度を求め,それらが界面pHに与える影響について調べた.得られた表面電位から電気二重層内のプロトン濃度分布のモデル計算を行って,蛍光分光表面力装置による評価結果と比較すると、いずれの電解質種の場合でも低電解質濃度の場合のみ両者は一致し、これは電気二重層によるプロトン濃縮で定量的に界面pH変化が説明できることを示している。一方、高濃度の場合はモデル計算に比べて遠距離から実験値の変化が観測され,その値は電解質種によって異なることが分かった.これらの結果から,高濃度の電解質の場合,電気二重層におけるプロトンの濃縮効果に加えて,他の要素が界面pH変化に影響することが示された。 さらに,基板の固-液界面pHへの影響についても調べることを目的として,上記同様のpH評価をシリカやアルミニウムを基板として行い,電気二重層,電解質の吸着,基板の化学状態の全てが界面pHに影響することを明らかにした.
|