研究課題/領域番号 |
17K05744
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
穂坂 綱一 東京工業大学, 理学院, 助教 (00419855)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 光解離 / もつれ / 水素分子 |
研究実績の概要 |
光解離片の間には、解離前の分子の対称性を反映した非局所的な相関, ”もつれ”, の存在が期待される。しかし、H2分子から生成したH(2p)+H(2p)ペア由来の光子ペアの放出角度相関は、予測された“もつれ”状態、混合アンサンブル、それらの線形結合のどれとも異なる状態にあった。光解離過程において、光励起直後の“もつれ”がどのように失われたかは興味深い。本研究では、測定角度範囲を広げた放出角度相関測定により、光子放出直前の原子ペアの状態を特定し、光励起直後の分子状態から原子ペアへの解離過程における“もつれ”の変化過程を明らかにする。 これまでのガスセルでは、放射光軸に直交した面内を2検出器が独立に回転した。しかし、この配置の実験結果のみでは、区別できない原子ペア状態がある。本研究では、2つの検出器が双極子面に無い配置での放出角度相関を測定するための新しいガスセルを製作する。今回のセルでは、6つの検出器の間の15通りの組合せの同時計数タイムスペクトルが同時に発生する。時間デジタル変換器への入力回路を工夫することで、15通りの組合せの同時計数タイムスペクトル全てを同時に測定できるようにした。ガスセルの製作は予定通り平成29年度に完了し、平成30年度には我々の理論予測を概ね再現する光子ペアの放出角度相関を得た。平成31年度は、6月に放射光施設のビームタイムを取得しており、再現性チェックの為の再測定結果を踏まえ、理論予測との比較により”もつれ”の変化過程を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)新ガスセルの製作 平成29年度は、2つの検出器が双極子面に無い配置用の新しいガスセルを設計、製作した。放射光軸を中心に回転するガスセルに対し、放射光軸を含む平面内に4つの検出器を設置した。光の進行方向から見て45度、135度、225度、315度の方向に配置した。また、この検出器平面に直交する方向にも2つの検出器を配置した。検出器平面と偏向ベクトルの相対角を回転させることで、計測済みの配置に加え、未計測の配置の放出角度相関を計測する。今回のセルでは、6つの検出器の間の15通りの組合せの同時計数タイムスペクトルが同時に発生する。時間デジタル変換器への入力回路を工夫することで、15通りの組合せの同時計数タイムスペクトル全てを同時に測定できるようにした。ガスセルの製作は予定通りに完了した。 2) 放出角度相関の計算 これまでは、分子領域における対称性から予測される原子ペア状態のみを実験結果と比較していたが、混合アンサンブルを含む任意の原子ペア状態と比較できるように、計算法を見直した。具体的には、原子ペア状態を記述する各基底関数に対し、その項のみから生成する放出角度相関と別の項との干渉により生成する放出角度相関を予め、それらを足し合わせる。足し合わせる際の重みや符号を調整することで、様々な原子ペアの放出角度相関を見通しよく比較できるようになった。 3)放出角度相関の測定 平成30年度は、29年度に製作したガスセルを用い、我々の理論予測を概ね再現する放出角度相関を得た。平成31年度は、再現性チェックの為の再測定を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は6月に放射光施設のビームタイムを取得しており、立再現性チェックの為の再測定を実施する。現在の暫定的な実験結果を再現する解離経路を既に見出しており、成果公表に向けた準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 研究費を効率的に利用したため未使用額が発生した。未使用額も次年度の計画の為に使用する。 (使用計画) 本研究で重要な役割を持つ高感度の光子検出器はCsIが;塗布されたMCPであり、その潮解性のため感度の劣化が早い。次年度においても一対、2枚を更新する。
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