研究実績の概要 |
均一系触媒において、金やパラジウムなどの貴金属触媒が、ソフトルイス酸的機能を発現するとともに、様々な触媒反応に応用されている。これらは主に貴金属のカチオン種と不飽和炭化水素との相互作用に起因するものである。ところが近年、酸化還元反応が得意と考えられた貴金属ナノ粒子触媒においても類似する触媒機能が報告されるようになってきた。そこで、このようなソフトルイス酸性が貴金属ナノ粒子担持触媒のどのような構造や電子状態に関係して発現するかを、第一原理計算による反応機構解明と、理論計算から得られる物性値との相関関係をもとに検討し、触媒機能の原理解明と触媒設計の作業指針を確立すること目指して研究を行っている。本年度は、Pdnx、Aunxクラスター(x=0,+1,n=1,…13)に対する吸着状態を第一原理計算で検討を行ってきた。この計算により、担体効果を含まないアリルアルコールなどとの相互作用を検討したところ、吸着エネルギーと脱離エネルギーにクラスターに内包された原子数でクラスターの電荷を除した場合に、孤立クラスターのサイズ変化が大きくなるにつれて基質と生成物の安定化エネルギーが単調に減少していくとが明らかとなった。また、不飽和共役炭化水素の異性化反応の途中には、六員環構造を有する中間体が得られるが、この中間状態の安定性が遷移状態の高さと相関しており、反応活性に著しく影響を与えることが明らかとなった。さらに、Pdクラスターでは、中性状態のクラスターではこの中間体が准安定構造とはならずに遷移状態となることも明らかとなった。
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