研究実績の概要 |
本年度はハロゲン分子(ヨウ素)を対象分子とし、電子励起状態間緩和過程における自然放射増幅過程(ASE)の重要性を評価した。ASEは反転分布を形成した媒質からの自然放射光が誘導放射過程によって増幅される光学過程であり、反転分布密度がある臨界値を超えた条件でのみ発振する。ヨウ素分子のf 0g+(3P0)状態からD 0u+(3P2)状態へのASEを対象とし、励起光とは別の3本目のレーザー光を導入することにより、それら電子状態間における反転分布を解消するASE緩和過程の制御を行った。 1, 2本目のレーザー光をそれぞれB 0u+(vB = 15, JB = 78) ← X 0g+(vX = 0, JX = 79)、f 0g+(3P2)(vf = 0, Jf = 79) ← B 0u+(vB = 15, JB = 78) 遷移の波長に固定し、f 0g+(3P2)状態への励起を達成した。さらに時間的に同期を取ったレーザー光の波長をD 0u+(3P2)(vD = 0, JD = 78) ← B 0u+(vB = 15, JB = 78) 遷移の波長に固定し、f 0g+(3P0) (vf = 0, Jf = 79) → D 0u+(3P2) (vD = 0, JD = 78)のみ反転分布を抑制してASE分散スペクトルを第3のレーザー光導入前後にて測定した。その結果、反転分布を抑制したf 0g+(3P0) (vf = 0, Jf = 79) →D 0u+(3P2) (vD = 0, JD = 78) (R78ブランチ)の積分強度が、第3のレーザー光導入後では明らかに減少していることが確認された。この実験事実は、我々が観測している赤外発光が蛍光ではなくASEであることを証明しており、ASEによる占有数の操作が可能であることを示している。
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