本研究は、分子系における励起状態ダイナミクス、特に占有数の移動を伴うエネルギー失活過程に関する基礎研究であるが、これまで認知されてこなかった「黒体放射の係る光学遷移」の関与するダイナミクスを取り扱おうとする点が特徴的である。遠赤外放射の吸収が励起分子系においても起こりうる物理化学過程であることが検証されており、この事実は低い励起状態におけるエネルギー失活過程とは全く異なる光学過程が働くということであり、高励起状態ダイナミクスの研究に与えるインパクトは大きい。黒体放射遷移のメカニズムを解明することによって、初めて分子の高励起状態におけるエネルギー失活の全体像を把握する道を拓いた。
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