研究課題/領域番号 |
17K05764
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
細井 晴子 東邦大学, 理学部, 准教授 (00313396)
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研究分担者 |
宮武 秀行 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (50291935)
内田 朗 東邦大学, 理学部, 教授 (30176680)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 蛍光タンパク質 / 蛍光寿命 / 蛍光メカニズム / 黄色蛍光タンパク質 / 緑色蛍光タンパク質 / 立体効果 / 水素結合 |
研究実績の概要 |
研究代表者はこれまでに、時間分解蛍光測定により黄色蛍光タンパク質eYFP のY145 変異体の蛍光寿命を測定した。Y145 変異体の蛍光寿命は3.4 nsから82 ps まで大きく変化し、145 番アミノ酸側鎖体積が小さくなるほど蛍光寿命が短くなる、つまり光らなくなる。本申請課題では、eYFP Y145 変異体の蛍光寿命の変化の起源を明らかにし、オワンクラゲ由来蛍光タンパク質に共通する性質を見出すことを目的とする。研究期間内に、eYFP野生型とその16種類の変異体の結晶構造を決定した。また比較として、緑色蛍光タンパク質eGFP野生型とその11種類の変異体の結晶構造を決定した。eGFPの蛍光寿命は、145番アミノ酸の種類によってあまり変化しない。 得られた全結晶構造において、3次構造にはほとんど変化がなく、発色団周辺の局所的な構造変化が観測された。eYFPとeGFPに共通して、145番側鎖体積の小さい変異体では、発色団の近傍に体積減少分の空間が現れた。つまり、発色団近傍の空間の大きさと蛍光寿命には相関がないことが明らかになった。またeGFPでは、発色団周辺にeYFPよりも強固な水素結合ネットワークが形成されることが分かった。eGFP発色団は水素結合によりベータバレル内に固定されているため、145番アミノ酸の変化の影響を受けにくく、寿命の変化が小さくなっていると説明できる。一方、eYFP発色団は、水素結合よりも、145番アミノ酸による立体的な固定が重要である。かさ高い側鎖によって発色団が固定されると、振動緩和が抑制され蛍光寿命が長くなり、逆に小さな側鎖では、発色団が固定されなくなることで蛍光寿命が短くなると考えられる。この性質は、他のオワンクラゲ由来蛍光タンパク質についても成り立つ、一般性のあるものだと考えている。
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