研究実績の概要 |
【有機/金属界面における長距離分子間相互作用の精密観測】分子間空隙や分子配列対称性が異なる種々の多環芳香族炭化水素(ペリレン、コロネン、ヘキサベンゾコロネン)の超構造単分子膜を作製し、角度分解光電子分光(ARPES)による価電子状態測定を行った。その結果、分子間での直接的なπ電子の重なりは無いにも関わらず、長距離分子間相互作用によって価電子バンドを形成していることを見出した(J. Phys. Chem. C 2018, 122, 26472)。 【分子軌道可視化法の開発】分子から放出された光電子強度の角度分布(PIAD)のフーリエ変換から、分子軌道を可視化する技術(orbital tomography)が提案されている。この実験には角度分解光電子分光(ARPES)を用いて広範囲に放出される光電子を計測する必要があるが、既存のARPES測定系では実験が難しい。本研究では、広範囲に放出されるPIADを取り込む高効率な電子検出装置の開発に成功した(論文投稿中)。 【高分子ヘテロ界面における接着機能の学理構築】高分子と高分子の接着接合界面における接着機能の発現機構を元素・官能基レベルで解明するため、モデル接着界面の軟X線分光研究に着手した。分子性材料の化学状態に高輝度X線を照射すると試料損傷が生じるため、定量的な化学状態解析は困難となる。本研究では、試料損傷が生じるX線照射しきい値を定量した(J. Electron Spectrosc. Relat. Phenom. 2019, 232, 11)。現在、損傷しきい値に基づいた非破壊化学状態測定のスキームを確立し、軟X線顕微鏡を用いた接着界面の化学状態とモルフォロジーの可視化に取り組んでいる。
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