研究課題
高分子系の接着接合界面における接着機能の発現機構を元素・官能基レベルで解明するため、モデル接着界面の軟X線分光研究を行った。分子性材料の化学状態に高輝度X線を照射すると試料損傷が生じるため、定量的な化学状態解析は困難となる。本研究では、試料損傷が生じるX線照射しきい値を定量した。これにより、顕微軟X線分光による接着界面観察に向けた測定スキームを確立した。さらに、接着界面における化学的状態の可視化を行うには、軟X線分光スペクトル構造と化学状態の関係(帰属)を確定する必要がある。このため、接着界面モデル材料であるアミン硬化4官能性エポキシ(TGDDM-DDS)、アミン硬化ビスフェノールA型エポキシ(DGEBA-DDS)、ポリエーテルケトン(PEEK)の軟X線吸収分光(XAS)測定を行った。その結果、TGDDM-DDSとDGEBA-DDSの熱硬化によって形成される未知のXASピークを観測した。この成因を明らかにするため、TGDDM-DDSの分子動力学(MD)計算から得たスナップショット構造を用いてXASスペクトルのシミュレーションを行った。その結果、XAS構造Aは分子鎖内のOH基とπ軌道やOH基同士の水素結合相互作用に由来する構造と明らかにした。このように、XASは複雑系高分子の物性に影響するOH…πやOH…OHなどの水素結合相互作用を評価できる有力な手法となることを示した。これらの知見を基に、顕微軟X線分光による接着界面観察の測定スキームを確立し、DGEBA-DDS/PEEKやDGEBA-DDS/TGDDM-DDS界面の化学状態可視化に取り組んでいる。
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