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2017 年度 実施状況報告書

ポストメタロセン触媒によるパラフィン系燃料前駆体の精密合成法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 17K05771
研究機関埼玉大学

研究代表者

中田 憲男  埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (50375416)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードポストメタロセン / オリゴマー化 / 燃料前駆体 / パラフィン / 前周期遷移金属
研究実績の概要

1-ヘキセンの位置選択的オリゴマー化反応から得られる5-メチレンウンデカン (二量体) や5-メチレン-7-ブチルトリデカン (三量体) は、ジェット燃料やディーゼル燃料の前駆体化合物となることが知られている。本研究では、一連のアリール置換型配位子を導入したジルコニウム錯体を前触媒とする1-ヘキセンのオリゴマー化反応を検討し、燃料前駆体として有用な1-ヘキセンの二量体および三量体のみが生成する触媒システムの確立を目的としている。
平成29年度では、配位子のフェノキシド部位のオルト位とパラ位にフェニル基を導入した錯体1とオルト位に2,6-ジメチルフェニル基、パラ位にメチル基を導入した錯体2を前触媒とする1-ヘキセンのオリゴマー化反応を検討した。前触媒として0.0056 mol%の錯体1または2と助触媒として錯体に対して100-300当量の乾燥修飾メチルアルミノキサン (dMMAO) を用い、1-ヘキセンのオリゴマー化反応をトルエン中または無溶媒下、25 ℃で1時間行った。いずれの触媒系も完璧な1,2-位置選択性で反応が進行し、99%以上の割合で対応するビニリデン末端のオリゴマーを与えた。特に、錯体1を用いた場合の触媒回転頻度 (TOF) は最高で11,100 h-1に達し、これまでに報告されているジルコノセン系触媒と比べて40倍程度高い値を示した。また、錯体1における二量体の生成割合は最高で80%であったが、より嵩高いアリール基を有する錯体2を用いた同反応では、TOFが3,530 h-1まで低下したものの、二量体の生成割合は最高で91%に達した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

研究当初、以下の数値目標(①実用化を視野に入れた5,000 h-1以上の高い触媒回転頻度の発現、②99%以上の完璧なビニリデン選択性の達成、③二量体、三量体のみの生成を目指した重合度の制御)を掲げたが、幸運なことに今回実施した錯体1および2は、これらの数値目標をおおむね達成した。しかしながら、現在積極的に推進されているバイオマス由来のバイオエナジー事業との差別化や優位性の発現を求め、本研究で見出した触媒系の実用化ステージへの探索を精査しなければならないと思われる。特に、錯体2では非常に高い二量体生成割合(91%)を達成したことから、ジェット燃料前駆体の代替合成法として期待できるため、次年度以降の目標として実用化を視野に入れた触媒活性の発現を目指し、配位子や触媒の再設計を検討する。

今後の研究の推進方策

平成29年度では、錯体1および2を前触媒とした1-ヘキセンのオリゴマー化反応では、ジェット燃料前駆体になりうる5-メチレンウンデカンを高効率で合成できることを見出している。これらの触媒系では完璧なビニリデン選択性を示したが、配位子内のフェノキシド部位のオルト位置換基のサイズを変えることにより、触媒回転頻度やダイマー選択性に差異が生じることがわかった。ジェット燃料の代替を視野に入れた実用化を目指す場合、特に高い触媒回転頻度と完璧なダイマー選択性の達成が必須である。
平成30年度では、ダイマー選択性が高かった錯体2の2,6-ジメチルフェニル基をプロトタイプとした配位子設計のスクリーニングからこの問題に解決していく。具体的には、2,6-ジメチルフェニル基と同程度の立体的な大きさを有するアリール基を選定し、電子吸引基の導入による中心金属のルイス酸性を上げて触媒活性の向上を図る。以下に、具体的な配位子設計の計画を挙げる。
①アリール基の2,6-位に強い電子吸引基であるトリフルオロメチル基の導入
②アリール基の2,6-位にメチル基と同程度のサイズであるブロモ基およびヨード基の導入(これらの場合も電子吸引基として働く)
合成した新規配位子とジルコニウム前駆体錯体(ZrCl4、Zr(CH2Ph)4)との反応から、一連のジルコニウム錯体を合成し、これらを前触媒とした1-ヘキセンのオリゴマー反応を実施する。

  • 研究成果

    (20件)

すべて 2017 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)

  • [国際共同研究] ポールサバチエ大学(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      ポールサバチエ大学
  • [雑誌論文] Donor-Stabilized Silylene/Phosphine-Supported Carbon(0) Center with High Electron Density2017

    • 著者名/発表者名
      Troadec Thibault、Wasano Tatsuya、Lenk Romaric、Baceiredo Antoine、Saffon-Merceron Nathalie、Hashizume Daisuke、Saito Yosuke、Nakata Norio、Branchadell Vicen?、Kato Tsuyoshi
    • 雑誌名

      Angewandte Chemie International Edition

      巻: 56 ページ: 6891~6895

    • DOI

      10.1002/anie.201702858

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Si-H Bond Activation of a Primary Silane with a Pt(0) Complex: Synthesis and Structures of Mononuclear (Hydrido)(dihydrosilyl) Platinum(II) Complexes2017

    • 著者名/発表者名
      Nakata Norio、Kato Nanami、Sekizawa Noriko、Ishii Akihiko
    • 雑誌名

      Inorganics

      巻: 5 ページ: 72~72

    • DOI

      10.3390/inorganics5040072

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Zirconium and Hafnium Complexes with Cycloheptane- or Cyclononane-Fused [OSSO]-Type Bis(phenolato) Ligands: Synthesis, Structure, and Highly Active 1-Hexene Polymerization and Ring-Size Effects of Fused Cycloalkanes on the Activity2017

    • 著者名/発表者名
      Ishii Akihiko、Ikuma Keita、Nakata Norio、Nakamura Kazuaki、Kuribayashi Hiroshi、Takaoki Kazuo
    • 雑誌名

      Organometallics

      巻: 36 ページ: 3954~3966

    • DOI

      10.1021/acs.organomet.7b00586

    • 査読あり
  • [学会発表] ジベンゾバレレン骨格に組み込まれたペンタ-2,4-ジエン-1-オールからのペンタジエニルカチオンの生成と性質2017

    • 著者名/発表者名
      蝦名亮太・中田憲男・石井昭彦
    • 学会等名
      第28回基礎有機化学討論会
  • [学会発表] 谷口翔一郎・柴田知佳・中田憲男・石井昭彦配位不飽和な5員環セレナイリダサイクルの反応性2017

    • 著者名/発表者名
      谷口翔一郎・柴田知佳・中田憲男・石井昭彦
    • 学会等名
      第67回錯体化学討論会
  • [学会発表] 剛直かつ嵩高い骨格に組み込まれた1,4-ジフェニル-1-ホスフィノ-1,3-ブタジエン誘導体の合成と性質2017

    • 著者名/発表者名
      菊島千晴・中田憲男・石井昭彦
    • 学会等名
      第44回有機典型元素化学討論会
  • [学会発表] 剛直な骨格に組み込まれた共役スルフィン(チオケトンS-オキシド)の合成、異性化および光物性2017

    • 著者名/発表者名
      蝦名亮太・中田憲男・石井昭彦
    • 学会等名
      日本化学会第98回春季年会
  • [学会発表] ジベンゾバレレン骨格に組み込まれた1,4-ジ(2-チエニル)-1-チオ-1,3-ブタジエン誘導体の二量体の合成とその性質2017

    • 著者名/発表者名
      村上夏紀・中田憲男・石井昭彦
    • 学会等名
      日本化学会第98回春季年会
  • [学会発表] トリメチルホスフィン配位子を有するヒドリド(ジヒドロシリル)白金(II)錯体の合成と動的挙動2017

    • 著者名/発表者名
      青山元雄・加藤菜々美・中田憲男・石井昭彦
    • 学会等名
      日本化学会第98回春季年会
  • [学会発表] イミノホスホナミド配位子により安定化されたクロロスタンニレンの反応性2017

    • 著者名/発表者名
      中谷一貴・高橋慎太郎・中田憲男・石井昭彦
    • 学会等名
      日本化学会第98回春季年会
  • [学会発表] Chlorosilylene Supported by an Iminophosphonamide Ligand2017

    • 著者名/発表者名
      高橋慎太郎・中田憲男・石井昭彦
    • 学会等名
      The 18th International Symposium on Silicon Chemistry
    • 国際学会
  • [学会発表] [OSSO]型ビス(フェノラト)ジルコニウム錯体を用いたp-ジビニルベンゼン共存下におけるスチレンのイソ特異的重合反応2017

    • 著者名/発表者名
      中村一瑛・中田憲男・石井昭彦
    • 学会等名
      第66回高分子討論会
  • [学会発表] クロロ(η2-イミノホスホナミド)シリレン: 合成, 構造,および反応性2017

    • 著者名/発表者名
      中谷一貴・高橋慎太郎・中田憲男・石井昭彦
    • 学会等名
      第77回CSJ化学フェスタ
  • [学会発表] アリール置換[OSSO]型ビス(フェノラト)ジルコニウム錯体による1-ヘキセンの超精密オリゴマー化反応2017

    • 著者名/発表者名
      中村一瑛・中田憲男・石井昭彦
    • 学会等名
      第77回CSJ化学フェスタ
  • [学会発表] ヒドリド(ジヒドロシリル)白金(II)錯体の動的挙動から見る構造的特徴-ヒドリド錯体or Si-H σ錯体?-2017

    • 著者名/発表者名
      青山元雄・加藤菜々美・中田憲男・石井昭彦
    • 学会等名
      第21回ケイ素協会シンポジウム
  • [学会発表] Synthesis of zirconium(IV) complex with 3,5-di-tert-butylphenyl-substituted [OSSO]-type bis(phenolate) ligand and 1-hexene oligomerization2017

    • 著者名/発表者名
      長岡将太郎・中村一瑛・中田憲男・石井昭彦
    • 学会等名
      日本化学会第98回春季年会
  • [学会発表] Optical Resolution and Photophysical Property of 1,4-Diphenyl-1-phosphino-1,3-butadiene Derivatives2017

    • 著者名/発表者名
      林優樹・菊島千晴・中田憲男・石井昭彦
    • 学会等名
      日本化学会第98回春季年会
  • [備考] 埼玉大学理学部基礎化学科石井研究室

    • URL

      http://www. chem.saitama-u.ac.jp/ishii-lab/

  • [備考] 埼玉大学理学部基礎化学科

    • URL

      http://www.chem.saitama-u.ac.jp/wiki/

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公開日: 2018-12-17  

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