研究実績の概要 |
強発光性スイッチ材料の開発を目的として研究を行い、以下の知見を得た。 アセチレンを介してベンゾクラウンエーテルを2つ連結したペリレン誘導体を合成し、そのクロロホルム:アセトニトリル=1:1溶液にバリウムイオンを1当量添加したところ、吸収帯の長波長シフトと蛍光強度の減少が起こり、それ以上加えると蛍光強度は逆に増大することが分かった。これは、ペリレン誘導体:バリウムイオン= 2 : 1および2 : 2錯体はエキシマーを形成して蛍光強度が減少するためであり、多段階スイッチ機能を有する強発光性金属イオン認識型スイッチ分子として有用であると考えられる。 ピレンと電子不足アルケンをオリゴエチレングリコール鎖で連結した化合物のアセトニトリル-ベンゼン混合溶液に紫外線を照射したところ、ピレン環の4,5位で位置および立体選択的に分子内光環化付加反応が進行し、ジヒドロピレン環を含むシクロファンが生成した。その反応の可逆性および原料と生成物の比は、溶媒の組成とオリゴエチレングリコール鎖の長さによって変化した。原料は分子内エキシプレックス発光を長波長側に、生成物はジヒドロピレンのモノマー発光を短波長側に示すため、光反応を用いる強発光性スイッチ材料の母骨格として有用であると考えられる。 芳香族化合物の分子内エキシマー発光の長波長化と強発光化を目的とし、2枚の1-エチニルピレンをビフェニレンの1,8位で架橋し、さらにシリルエチニル基を複数個導入した化合物を合成し、蛍光特性を調べたところ、分子内エキシマー発光の極大波長は566 nmへと長波長化し、蛍光量子収率も0.164にまで増大することが明らかになった。エチニルピレンとエチニルペリレンをビフェニレンで架橋した化合物では516 nmを極大とする分子内エキシプレックス発光を強く示し、その蛍光量子収率は0.336であることも分かった。
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