イソシアニドジクロリドを活用した新規複素環化合物合成法の開発を行った。複素環化合物とは,炭素以外の原子を環状に含む化合物の総称である。これらの化合物群は多様な性質を持っており,天然物,医薬品,農薬や有機材料など多岐にわたる物質に内包される骨格であるため,複素環化合物の高効率的な合成法の開発は有機合成化学上,最も重要なテーマの一つである。従来の合成法では,遷移金属触媒の利用や,複雑な骨格である原料を用いる必要があった。これらの問題を解決すべく,比較的調製容易なイソシアニドジクロリドを活用することで,環境調和型の反応に基づく複素環化合物合成の開発に着手した。 まず,イソシアニドジクロリドを活用した,多官能性ジヒドロオキサゾール及びオキサゾール誘導体の高効率的合成法を開発した。すなわち,α位にトシル基を有するイソシアニド(TosMIC)から誘導したイソシアニドジクロリドとアルデヒドとのアルドール型反応により,簡便に2-クロロジヒドロオキサゾール誘導体が得られた。さらに,残存するイミドイルクロリドとさらなる求核剤との付加-脱離反応により,多官能性ジヒドロオキサゾール及びオキサゾール誘導体を得ることに成功した。また,本反応において,イソシアニドのジクロロ化,アルドール型反応,付加-脱離反応の3stepをOne-Potで行うことで,より効率的な多官能性ジヒドロオキサゾール及びオキサゾール誘導体の合成法を見出すことができた。
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