研究実績の概要 |
平成30年度は、前年度に開発した新規な手法を用いて1,2-ホルミルアズレン誘導体の合成を行い、これらをホスフィン触媒存在下で、窒素上に様々な置換基を有するマレイミド類との縮合反応を行うことで中~高収率でアズレン縮環フタルイミド誘導体を合成することに成功した。得られたアズレン縮環フタルイミド誘導体について、分光学的ならびに電気化学的特性についても検討を行った結果、中性溶液条件では発光を示さないにもかかわらず、酸性溶液条件下では顕著な発光を示すハロクロミック挙動を示すことを明らかにした (Org. Chem. Front., 2019, 6, 195-204)。また、芳香族求核置換反応によるアミノアズレンおよびアゾアズレン類の合成 (J. Org. Chem. 2019, 84, 1257-1275)、ならびにテトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタンとの[2 + 2]環化付加反応を利用したアズレン誘導体の新規な合成法 (J. Org. Chem. 2018, 83, 12, 6690-6705)を開発した。これらの手法は、縮環アズレン類の官能基化に有用な手法となると考えている。さらに縮環アズレン類の有用な前駆体となる1-シアノ-2-アミノアズレン類の効率的合成法も開発し、得られた化合物の光学特性を分光学実験および計算化学の観点から明らかにした (Heterocycles, 2018, 97, 1068-1081)。
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