研究実績の概要 |
チオフェン部に様々なアリール基を有するアズレノ[2,1-b]チオフェン誘導体を中程度の収率で合成することに成功した。この合成法により、従来の方法では合成が困難であったアズレノ[2,1-b]チオフェンの新たな合成ルートを開発することが可能となった。得られたアズレノ[2,1-b]チオフェンについて、分光学的ならびに電気化学的特性についても検討を行った結果、紫外可視吸光光度法においてアズレノ[2,1-b]チオフェンは有機溶媒中ではアズレン自身と同様の吸収帯を示したが、酸性条件下ではアズレノ[2,1-b]チオフェンの5員環のプロトン化によるトロピリウムイオンの生成により、顕著なハロクロミック挙動が観察された (Org. Chem. Front., 2019, 6, 280-2811)。さらに、本研究で合成したアズレノ[2,1-b]チオフェン誘導体とアセチレンジカルボン酸ジメチルとの環化付加反応によって、チオフェン縮環ヘプタレン誘導体の合成に成功した。現在、この研究結果については論文投稿中である。 縮環アズレン類の重要な前駆体となる2-アリールアズレン類の効率的合成法についても開発を行った。2H-シクロヘプタ[b]フラン-2-オン類とアリール基置換シリルエノールエーテルとの[8 + 2]環化付加反応によって2-アリールアズレン類を合成することが可能となった。2-アリールアズレン類の発光挙動についても検討を行った結果、アズレン誘導体としては高い量子収率を示すことが明らかとなった (Chem. Commun., 2020, 56, 1485-1488)。 さらに、アズレン置換プロパルギルアミン類とテトラシアノエチレンとの反応によるアズレン置換ピロール、ペンタフルベン、ピロロピリジンの新規合成法の開発に成功した。この手法は、縮環アズレン類の官能基化に対して有用な手法になりうると考えられる。この研究成果はChemistry-A European JournalにVery Important Paperとして掲載された(Chem. Eur. J. 2020, 26, 1931-1935)。
|