研究課題/領域番号 |
17K05781
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
安藤 香織 岐阜大学, 工学部, 教授 (70211018)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 合成化学 / 共役ジエン / シス‐トランス選択性 / Julia-Kocienski反応 / スルホン試薬 / ワンポット合成 |
研究実績の概要 |
共役ジエンの立体選択的合成法の開発を行った。Julia-Kocienski反応を用いて共役ジエンを合成する場合、アリルスルホンとアルデヒドとの反応(方法1)とアルキルスルホンとα,β-不飽和アルデヒドとの反応(方法2)の2つが可能である。前者の反応では一般に生成する二重結合がシスとなりやすく、後者は生成する二重結合がトランスとなりやすいが、選択性については改善が必要である。我々は方法2を用い、新試薬を開発することにより非常に高い選択性で種々のα,β-不飽和アルデヒドとの反応によりトランス-共役ジエンを合成する方法の開発に成功した。方法1を用いる共役ジエンの合成では、1-t-butyltetrazolyl allyl sulfone試薬Aとn-decanalとの反応が非常に高いシス選択性で共役ジエンを与えることが既に報告されているが、この一例だけでジエンの収率および試薬合成の収率は中程度であった。そこで試薬Aを含むいくつかの試薬を合成し種々のアルデヒドとの反応を行った。試薬Aのシス選択性は高いが、枝分かれのあるアルデヒドとの反応では収率が大きく低下した。そこでヘテロ環部分を換えた新しい試薬を用いたところ、ほとんどのアルデヒドで95:5以上のシス選択性、86-98%の高収率で共役ジエンが得られることがわかった。次に、Julia-Kocienski試薬の実用的合成法の開発も行った。試薬をアルコールから合成する場合、光延反応を用いてスルフィド化した後酸化するのが普通であるが、光延反応では副生するPh3P=Oの除去が困難な場合があり、またDEADやDIADなどの試薬が高価であることも問題である。そこで、ワンポットでアルコールのメシル化とスルフィド化、酸化を行う方法を開発した。本方法では副生成物は分液操作で容易に除けるため、高純度の試薬をワンポットで得ることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、共役ジエンの立体選択的合成法を開発することができ、研究は順調に進んでいる。しかし、反応機構の解明については、中間体の捕捉実験などで成果が得られず進んでいないため、おおむね順調とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度には反応機構の解明のため、中間体を与えやすいモデル化合物の合成なども検討する。また、理論計算による反応機構の解析を合わせて行い、反応機構解明のための糸口をつかみたい。さらに、内部アルケンの立体制御合成についても本年度は検討を行っていく。前年度に開発に成功した共役ジエンのシス選択的合成法とトランス選択的合成法については、論文としてまとめ出版をめざす。Julia-Kocienski試薬のワンポット合成法の開発研究についても、結果をまとめ論文として発表する予定である。
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