研究実績の概要 |
実験化学者が化合物の結合や相互作用に関する物性や測定結果を自身で解析・評価できるようQTAIM-DFA (quantum theory of atoms-in-molecules dual functional analysis)を提案し、相互作用の統一的評価・分類手法を確立した。相互作用を静的・動的両特性から評価し、有機化学や生化学の発展に大いに寄与してきた。動的特性は極めて重要な情報を提供するが若干の摂動構造依存性を解決する必要がある。 そこで本研究では、次の(1)-(3)を目的とした。(1)座標系に依存しない新規な摂動構造の作成法(CIVと命名)を提案し、QTAIM-DFAをさらに高精度化し、極めて信頼性の高い相互作用の動的特性を提供する。(2)CIVを適用し多くの化学種に対して相互作用の特性を明らかにする。(3)QTAIM-DFAを結晶や酵素等の巨大分子の相互作用も解析できる有効な手法として確立する。 2019年度は、(i)POM, NIV, CIVによる摂動構造の作成法の確立に加え、基底関数およびレベル依存性を明らかにした。(ii)ナフタレンの1,8-位における同核および異核カルコゲン間の相互作用、分子内のO-H---π相互作用の特性、o-MenGCH2C6H4EYにおけるG---E-Y σ(3c-4e)相互作用の評価・分類にQTAIM-DFAを適応した。(iii)sulfonylimino-λ3-bromanesにおける遷移状態の相互作用の評価・分類にNIVを適用して、QTAIM-DFAを適応した。この成果はFront coverにも紹介された。(iv)核酸塩基対における多重水素結合の相互作用の評価・分類にQTAIM-DFAを適応した。 COVID-19の影響で2月初め頃から在宅勤務となってしまい、計算機実験が行えなくなってしまったが、計画は概ね順調に進んだ。
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