研究実績の概要 |
我々は前年度,ビニリデンオルトキノンメチッド(VQM)の生成に基づく架橋アルキン-インドール系の高エナンチオ選択的不斉分子内ヒドロアリール化の開発に成功した.本年度は,本法の一般性や実用性を明らかにするために,各種の置換基を有する基質の反応,触媒量の低減化,グラムスケールの反応などを検討した.その結果,シンコニジンを触媒として用いた場合,インドール中のベンゼン環の様々な位置に電子求引基または電子供与基を導入した基質は,いずれも置換基をもたない基質と同様に極めて高いエナンチオ選択性(94~96% ee)を示した.また,窒素原子上の置換基として前年度に報告したメチル基以外にも,脱保護が容易なメトキシメチル基やベンジル基などを有する基質の反応でも,高い光学純度の軸不斉生成物が得られた.さらに,グラム量の基質を用いた場合や触媒量を1 mol%まで低減した場合でも,高エナンチオ選択性が維持されることが明らかとなった.なお,反応は総じて定量的に進行し,極めて高い単離収率で生成物を得ることができた.このように,本反応は,安価な触媒(シンコニジンあるいはシンコニン)を用いて調製容易な基質から他法では得難いカルバゾールを含む軸不斉化合物が光学活性体として得られる点で極めて優れており,その一般性や実用性も十分に高いことが示された,得られた結果を論文にまとめてアメリカ化学会発行のOrganic Letters誌に投稿し,審査員から高い評価を受けて受理された.また,本論文は,他誌に紹介された: T. M. Swager, S. I. Etkind, Synfacts 14, (2018) 1136.
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