• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実施状況報告書

ビニリデンオルトキノンメチッドの生成を鍵とするアルキンの不斉ヒドロアリール化

研究課題

研究課題/領域番号 17K05788
研究機関熊本大学

研究代表者

入江 亮  熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (70243889)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード不斉合成 / 有機触媒 / 塩基触媒 / アルキン / 環化 / ヒドロアリール化 / ヘテロビアリール / 軸不斉化合物
研究実績の概要

我々は前年度,ビニリデンオルトキノンメチッド(VQM)の生成に基づく架橋アルキン-インドール系の高エナンチオ選択的不斉分子内ヒドロアリール化の開発に成功した.本年度は,本法の一般性や実用性を明らかにするために,各種の置換基を有する基質の反応,触媒量の低減化,グラムスケールの反応などを検討した.その結果,シンコニジンを触媒として用いた場合,インドール中のベンゼン環の様々な位置に電子求引基または電子供与基を導入した基質は,いずれも置換基をもたない基質と同様に極めて高いエナンチオ選択性(94~96% ee)を示した.また,窒素原子上の置換基として前年度に報告したメチル基以外にも,脱保護が容易なメトキシメチル基やベンジル基などを有する基質の反応でも,高い光学純度の軸不斉生成物が得られた.さらに,グラム量の基質を用いた場合や触媒量を1 mol%まで低減した場合でも,高エナンチオ選択性が維持されることが明らかとなった.なお,反応は総じて定量的に進行し,極めて高い単離収率で生成物を得ることができた.このように,本反応は,安価な触媒(シンコニジンあるいはシンコニン)を用いて調製容易な基質から他法では得難いカルバゾールを含む軸不斉化合物が光学活性体として得られる点で極めて優れており,その一般性や実用性も十分に高いことが示された,得られた結果を論文にまとめてアメリカ化学会発行のOrganic Letters誌に投稿し,審査員から高い評価を受けて受理された.また,本論文は,他誌に紹介された: T. M. Swager, S. I. Etkind, Synfacts 14, (2018) 1136.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

架橋アルキン-インドール系の触媒的不斉ヒドロアリール化の研究成果を論文にまとめて発表することができた.また,ビニリデンオルトキノンメチッドの生成を鍵とする触媒反応に関する総説を発表した.インドール以外の求核性アリール基を有する基質の反応についても,興味深い結果が得られつつある.

今後の研究の推進方策

インドール以外の求核性アリール基を有する基質の反応について検討する.また,複素芳香族化合物の一種であるカルバゾールは,正孔輸送性や蛍光性など,顕著な物性を示すことが知られている.このことから,これまでにカルバゾールが組み込まれた様々なπ共役系化合物が合成され,それらの優れた光電子物性が見出されている.最近,そのようなπ共役系にキラリティを導入して特異なキラル物性を発現させる試みが注目されている.今後,そうした分子の一つとして,本研究で得られた軸性キラルなカルバゾール誘導体を設計し,そのキラル物性を明らかにしたい.

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2018 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Asymmetric Synthesis of Axially Chiral Benzocarbazole Derivatives Based on Catalytic Enantioselective Hydroarylation of Alkynes2018

    • 著者名/発表者名
      Sachie Arae, Shota Beppu, Takahiro Kawatsu, Kazunobu Igawa, Katsuhiko Tomooka, Ryo Irie
    • 雑誌名

      Organic Letters

      巻: 20 ページ: 4796-4800

    • DOI

      10.1021/acs.orglett.8b01945

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Vinylidene ortho-Quinone Methides: Unique Chiral Reaction Intermediates in Catalytic Asymmetric Synthesis2018

    • 著者名/発表者名
      Sachie Arae, Masaki Furusawa, Shota Beppu, Kazunobu Igawa, Katsuhiko Tomooka, Ryo Irie
    • 雑誌名

      Chimia

      巻: 72 ページ: 892-899

    • DOI

      10.2533/chimia.2018.892

    • 査読あり
  • [学会発表] アルキンの高エナンチオ選択的ヒドロアリール化を基盤とする軸不斉ベンゾカルバゾール誘導体の効率的合成2018

    • 著者名/発表者名
      荒江祥永, 別府翔太, 河津貴大, 井川和宣, 友岡克彦, 入江亮
    • 学会等名
      モレキュラー・キラリティー2018
  • [学会発表] 触媒的脱水素および酸化還元不均化型分子内プロトン移動反応を基盤とする縮合多環骨格構築法2018

    • 著者名/発表者名
      入江 亮
    • 学会等名
      第51回 酸化反応討論会
    • 招待講演
  • [学会発表] アルキンの触媒的かつ高エナンチオ選択的ヒドロアリール化を基盤とする 軸不斉ベンゾカルバゾール誘導体の不斉合成2018

    • 著者名/発表者名
      荒江 祥永,別府 翔太,河津 貴大, 井川 和宣,友岡 克彦,入江 亮
    • 学会等名
      第44回反応と合成の進歩シンポジウム
  • [学会発表] Asymmetric Synthesis of Benzo[a]carbazole Derivatives with Axial Chirality by Enantioselective Hydroarylation of Alkynes Catalyzed by Chiral Bases2018

    • 著者名/発表者名
      Sachie Arae, Shota Beppu, Kazunobu Igawa, Katsuhiko Tomooka, and Ryo Irie
    • 学会等名
      第6回 日英触媒的不斉合成シンポジウム(6th Japan-UK Symposium on Asymmetric Catalysis)
  • [学会発表] Catalytic Enantioselective Hydroarylation of Alkynes for Asymmetric Synthesis of Axially Chiral Benzo[a]carbazoles2018

    • 著者名/発表者名
      Sachie Arae, Shota Beppu, Takahiro Kawatsu, Kazunobu Igawa, Katsuhiko Tomooka, and Ryo Irie
    • 学会等名
      The 14th International Kyoto Conference on New Aspects of Organic Chemistry (IKCOC-14)
  • [備考] 入江研究室

    • URL

      http://kumamotolab.wixsite.com/irie-laboratory

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi