現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画した4つのミッションのいずれにおいても、昨年度と同様に、当初の計画通りか、あるいは計画以上の研究成果を得ることができた。特に重要なものとしては、以下の成果を上げることができる。1.ミッション(1)において、βメチルセレノシステイン(L-セレノスレオニン)誘導体に加えて、そのエピマーであるL-アロセレノスレオニン誘導体の合成にも成功した。これを用いて触媒的不斉反応を行ったところ、アロ体ではエナンチオ選択性が逆転するという興味深い結果を得ることができた。2.環状セレノペプチドの合成については過去にほどんど報告がない。本研究では、分子内セレノシステインネイティブケミカルライゲーション法を用いることで、環状セレノペプチドを確実に合成できる手法を開発することに成功した(Chem. Commun., 2018, 54, 11737)。本法は様々な環状ペプチドの合成に有用なものとなるであろう。3.セレノシステイン置換インスリンアナローグ(セレノインスリン)の合成法を発展させることで、天然インスリンの酸化的フォールディング機構を完全に解明し、これを応用することでヒトインスリンの簡便かつ効率的な化学合成法(天然鎖アセンブリ法)を開発することができた(Communications Chemistry, 2018, 1, 26)。今後、糖尿病治療薬であるインスリンを大量かつ安価に市場に供給できる技術へと本手法が発展することが期待される。
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