研究課題/領域番号 |
17K05794
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
川面 基 日本大学, 文理学部, 教授 (50360243)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | パラジウム / フッ素 / トリフルオロメチル基 / スルホンアミド / フェノール / アルコール / エノールエーテル |
研究実績の概要 |
本年度は,初年度の結果を踏まえて2つの反応系に関する更なる研究を行った.その結果,分子内にフッ素原子を一つだけ有するモノフルオロアリルエステルに関する反応系ににおいては,これまでに達成できていなかった窒素求核剤を二分子導入するパラジウム触媒反応系を確立する事に成功した.具体的には2-フルオロアリルアセテートのパラジウム触媒反応において,スルホンアミドを求核剤とすることで窒素求核剤が二分子導入されるダブルスルホンアミド化反応を進行させる事に成功した.また,その反応における立体選択性はほぼ完全なものであり,Z体のみを単一の立体異性体として与えることも明らかにした. 一方,分子内に3つのフッ素原子を有する2,3,3-トリフルオロアリルカーボネートと求核剤との反応開発においては,引き続き前年度までに見出している,求核剤がアリル基の2位に導入されつつ分子内でトリフルオロメチル基を構築する反応系の開発を行った.その結果,これまでに実現されていなかった酸素求核剤による反応を進行させる事に成功した.なお,ここでの酸素求核剤としてはアルコール類とファノール類とが使用可能であり,それぞれ対応するトリフルオロメチル基を有するエノールエーテル類を高収率で与える事を確認している.さらに,本反応における立体選択性に関しては,既に明らかにしているアミンやインドールを求核剤とした時と同じ傾向を示し,Z体が優先的に得られることも確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子内にフッ素原子を1つ有する2-フルオロアリルエステルでの反応に関しては,当初予定していた計画が順調に進んでおり,今年度は窒素求核剤を利用した反応系を確立することができた.この結果は,ジアミン誘導体の新しい合成手法となるだけではなく,今後の目標の一つである新規反応開発,すなわち昨年度実現した酸素求核剤を用いたカップリングおよび連続した分子内環化反応によるベンゾフラン誘導体合成と類似の反応(インドール誘導体合成)の実現に一歩近づく結果であることから,本研究が当初の計画通り進行していると言える. また,分子内にフッ素原子を3つ有する2,3,3-トリフルオロアリルカーボネートと求核剤との反応開発も当初の予定通りに進行している.具体的には,当初の計画に挙げていた,これまでに達成されていなかった酸素求核剤による反応を進行させる事に成功しており,本研究も当初の予定通りに進行していると言える.さらに,本研究においては使用できる酸素求核剤として様々なアルコール類とフェノール類が使用可能である事を見出し,49種類の新規エノールエーテル類を合成する事にも成功していることから,新規反応系確立としては十分な結果と判断している.
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今後の研究の推進方策 |
分子内にフッ素原子を1つ有する2-フルオロアリルエステルでの反応に関しては,他の求核剤による更なる反応系開発を進めると共に,反応基質側の拡張も目指す.たとえば,これまでのモノ置換化合物に限定せず,例えば二置換の含フッ素アリルエステルでの反応実現を目指す.その際,置換基の置換様式によっては不斉炭素中心が生成することも予想されるため,その場合にはその立体化学の制御も含めて不斉ダブル置換反応の実現を目指す事を計画している. 分子内にフッ素原子を3つ有する2,3,3-トリフルオロアリルエステルでの反応に関しては,反応機構の解明も意識した更なる反応開発を進める.そのためには,これまでとは異なるタイプの求核剤での反応を検討し,その反応が進行するのか,あるいは異なる反応が進行するかを比較しつつ新たな反応の開発を目指す.また,本反応においても反応基質側の拡張を目指し,例えばトリフルオロメチル基を有する四置換アルケンの立体選択的合成手法の確立を目指す.更に,反応機構解明のための異なるアプローチとして,反応中間体として想定される含フッ素パラジウム錯体の合成・単離,あるいはNMRなどによる観測を目指した検討も行う.
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