前年度までの結果に基づいて更なる反応系の拡張を行った.その結果,トリフルオロアリルエステルに関する反応系においては幾つかの新規反応確立に成功した.例えば,3級のトリフルオロアリルエステルでの反応においては求核剤として様々なアミン類を用いた反応を位置選択的に進行させることに成功し,分子内でのトリフルオロメチル基構築を伴う四置換内部アルケンの合成に成功した.また,本研究検討の過程において,求核剤をヒドリドとした反応はフッ素原子の移動を伴わずに進行するものの,通常のフッ素原子を含まないアリルエステルでの場合とは異なる位置選択性で反応が進行し,ジフルオロメチル基の構築に成功した.また本反応系は3級のトリフルオロアリルエステルだけではなく,2級のアリルエステルでも同じくジフルオロメチル基を有する内部アルケンを与える事を確認できた.一方,2-フルオロアリルエステルでの反応においては,二置換型2-フルオロアリルエステルとフェノール求核剤とを用い,そこでの触媒系に不斉配位子を組み込むことで不斉反応化する事を目指した.その結果,目的の反応が狙い通りに進行し90%以上のエナンチオ選択性で不斉ダブル置換反応を進行させる事に成功した.
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