研究実績の概要 |
平成29年度は、本申請課題に関連する次の3点について検討をおこなった。 1)ルイス酸触媒を用いたディールス-アルダー反応に関する量子化学的検討:標記反応では、ルイス酸がジエノフィルに配位することでジエノフィルのLUMOのエネルギー準位が低下し、ジエンからの電子非局在化が容易になるために反応性が高まる。さらに、ジエノフィルの反応中心から電子ポピュレーションが減じられることにより、ジエンとの間の重なり反発が減少することも反応性の増大に寄与していると考えられる。そこで、AlCl3をルイス酸触媒とした1,3-ブタジエンとアクロレインとの間の単純なモデル反応系を用いてルイス酸による効果を詳細に検討した。 2)相互作用系における力の定数の解析:二体間相互作用系におけるエネルギー変化を、2つの孤立系の構造変位に伴う不安定化エネルギー項と、相互作用に伴う安定化エネルギー項とに分けて議論する試みが古くよりされてきた。その上で、安定化エネルギー項を分割する、いわゆるエネルギー分割法に関して、様々な方法が提案されてきた。この考え方を、各原子に働く力や、平衡構造における力の定数の分割について適用する方法について考察し、CH3Cl + Cl- 系のSN2反応における遷移状態構造に関してRHF/6-311G**レベルでの数値計算の検証をおこなった。 3)Bis(perfluorocatecholato)silaneのルイス酸性に関する予備的検討:Bis(perfluorocatecholato)silane (Si(catF)2) をルイス酸触媒として用いたアルデヒドのヒドロシリル化反応に注目し、予備計算として、ルイス酸 (Si(catF)2, B(C6F5)3) とルイス塩基 (OPMe3, ベンズアルデヒド) の配位付加体に関してM06-2X/6-311G**レベルのDFT計算による検討をおこなった。
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