研究実績の概要 |
カチオン性低配位化学種が配位した遷移金属錯体の合成と小分子活性化に関して、令和元年度は以下の研究を実施した。 これまでの研究から金属―ゲルマニウム三重結合を持つカチオン性ゲルミリン錯体は二水素およびアルデヒド、ピリジン、末端アルケンの不飽和結合に隣接するC―H結合を活性化することが明らかとなった。また、理論計算により末端アルケンのC―H結合活性化はカチオン性メタロゲルミレン中間体のゲルマニウム中心で起こることを示した。今年度はゲルマニウムに結合した金属フラグメント上の配位子を電子供与性の強いペンタメチルシクロペンタジエニル配位子から電子供与性の弱いビス(トリメチルシリル)シクロペンタジエニル配位子に変更したカチオン性ゲルミリン錯体およびカチオン性メタロゲルミレンを合成し、二水素活性化における金属上の配位子の電子的効果を検証した。その結果、カチオン性メタロゲルミレンによる二水素活性化では反応速度に大きな違いは見られなかったが、カチオン性ゲルミリン錯体による二水素活性化ではビス(トリメチルシリル)シクロペンタジエニル配位子を持つ方の反応速度が劇的に遅くなることが明らかとなった。この結果から、カチオン性ゲルミリン錯体による二水素の活性化は配位子の影響を直に受ける金属上でおこることが示された。理論計算により、二水素はカチオン性ゲルミリン錯体の金属中心にまず酸化的付加し,その後ゲルマニウム上に1,2-転位することで金属―ゲルマニウム三重結合に付加することが示された。
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