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2018 年度 実施状況報告書

新規含ヒ素配位子の合成と新規触媒反応の開拓

研究課題

研究課題/領域番号 17K05803
研究機関東京大学

研究代表者

田邉 資明  東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 研究員 (20384737)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード光反応 / フェロセン / サマリウム / 水 / 酸化反応 / ホスフィン / アンモニア / 窒素固定
研究実績の概要

常温・常圧という温和な反応条件下での窒素ガスからの触媒的アンモニア生成反応において、窒素架橋二核モリブデン錯体が優れた触媒として働くことが見いだされて来たが、本触媒反応で利用可能なプロトン源はピリジン共役酸誘導体に限られてきた。そこで実用的な触媒反応を開発する研究の一環として、水をプロトン源として利用する新しい触媒的窒素固定反応の開発に取り組んだ。水を予め活性化してプロトン源として利用する方法を検討する過程で、ルテニウム錯体を用いた水の触媒的酸化反応を行うことで水由来のプロトン源を系中で発生させ、これをプロトン化剤として利用し、触媒的アンモニア生成反応を行ったところ、常温・常圧という温和な反応条件下での窒素ガスからの触媒的なアンモニア生成反応の開発に成功した。さらに人工的な光合成の開発と関連して、可視光照射下で
の水の触媒的光酸化反応を利用することで、水をプロトン源とする常温常圧での触媒的アンモニア生成反応の開発に既に成功している。次に比較的弱い酸化剤として知られているフェロセニウムカチオンを用いて可視光照射下での水の酸化反応を行った。反応系中に化学量論量のホスフィンを添加した場合に水の酸化反応が速やかに進行することを見出した。すなわち常圧のアルゴンガス雰囲気下でトリフェニルホスフィンと2,6-ルチジンの存在下、可視可可視光 (λ > 380 nm)照射下でフェロセニウムカチオンを酸化剤として利用した水の酸化反応を行った。反応は室温3時間で速やかに完結し、フェロセン、トリフェニルホスフィンオキシド、ルチジン共役酸がそれぞれ定量的に生成した。詳細な検討の結果、フェロセニウムカチオンは酸化剤と同時に光増感剤としても働くことが明らかになっ
た。本反応は水の酸化反応において、比較的弱い酸化剤であるフェロセニウムカチオンが適用可能であることを示した初めての例である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的はヒ素を配位子として有する錯体を用いて新規触媒反応を開拓することであるが、ヒ素を有する窒素錯体を光励起による水の酸化反応由来の酸をプロトン源として用いることにより、アンモニアが生成することを見出した。水の酸化反応を組み合わせた系においては、ヒ素を含む錯体ではないものの、触媒的なアンモニア生成反応の構築に成功した。また光励起による水の酸化反応の検討の過程で、フェロセニウムカチオンのような安価な酸化剤が光によって励起され、水の酸化剤として働くことを見出した。フェロセニウムカチオンが水の酸化剤として働くことによりフェロセンが生成するが、フェロセンに代表されるメタロセンは、窒素をアンモニアへと還元する反応の還元剤として働くことが知られており、本実験結果は窒素をアンモニアへと変換する触媒反応構築のための重要
な進捗の一つといえる。さらにフェロセニウムカチオン自体が可視光を吸収してホスフィンを酸化することを見出し、教科書に掲載されていもおかしくないような、基礎化学上の新しい知見を加えた。

今後の研究の推進方策

窒素をアンモニアへと還元することが可能なサマリウム塩に関し、サマリウム3価種が光反応によりアルコールや水を酸化しつつ自身がサマリウム2価種へと還元することを見出した。今後サマリウム誘導体やコバルト誘導体を用いた水、アルコールの酸化反応を関体し、これを窒素をアンモニアへと変換する反応に用いることで、光反応を用いた触媒的アンモニア生成反応を実現する。これと併せて、新規ヒ素配位子を有する窒素錯体の合成を検討し、触媒反応へと展開する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Recent Advances in Nitrogen Fixation upon Vanadium Complexes2019

    • 著者名/発表者名
      Yoshiaki Tanabe、Yoshiaki Nishibayashi
    • 雑誌名

      Coord Chem Rev.

      巻: 381 ページ: 135~150

    • DOI

      10.1016/j.ccr.2018.11.005

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Phosphine Oxidation with Water and Ferrocenium(III) Cation Induced by Visible-Light Irradiation2018

    • 著者名/発表者名
      Yoshiaki Tanabe、Kazunari Nakajima、Yoshiaki Nishibayashi
    • 雑誌名

      Chem. Eur. J.

      巻: 24 ページ: 18618~18622

    • DOI

      10.1002/chem.201805129

    • 査読あり
  • [学会発表] Catalytic Conversion of Dinitrogen into Ammonia under Ambient Reaction Conditions by Using Proton Source from Water2018

    • 著者名/発表者名
      Yoshiaki Tanabe、Kazuya Arashiba、Kazunari Nakajima、Yoshiaki Nishibayashi
    • 学会等名
      28th International Conference on Organometallic Chemistry
    • 国際学会
  • [学会発表] Catalytic Conversion of N2 into NH3 under Ambient Reaction Conditions by Using Proton Source from H2O2018

    • 著者名/発表者名
      Yoshiaki Tanabe、Kazuya Arashiba、Kazunari Nakajima、Yoshiaki Nishibayashi
    • 学会等名
      43rd International Conference on Coordination Chemistry
    • 国際学会
  • [図書] Transition-Metal-Dinitrogen Complexes: Preparation and Reactivity2019

    • 著者名/発表者名
      Yoshiaki Nishibayashi(ed)
    • 総ページ数
      496
    • 出版者
      Wiley-VCH
    • ISBN
      978-3-527-34425-3

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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