本研究において超原子の液相合成を初めて実証した。この研究では、樹状高分子であるデンドリマーを鋳型とする手法を用いた。これはデンドリマーへの段階的な錯形成を利用したものであり、これにより金属の数および異種金属の配合比を制御できる手法である。成果は1:典型金属種の精密集積を達成、2:異種金属集積法の確立、3:超原子の液相合成を実証 にまとめられる。 1、に関して、典型金属種の精密集積と金属クラスター合成を開拓した。ホウ素、アルミニウム、ガリウムの13族元素および14族のスズ、15族のビスマスの化学種など様々な金属集積とその機能開拓、そして集積体を用いた精密なクラスター合成を達成した。 この研究で実証した典型元素はpブロックに属しており、族ごとに異なった性質を持つ。これは似た性質を示す遷移金属とは対照的であり、配位力の制御に対して有利に働く。これを利用した異種金属の配合集積へも展開した。 2、異種金属配合が錯形成の強さで制御できることを報告した。特に同じ金属元素であってもカウンターアニオンの違いで錯形成の強弱が制御できることを明らかにした。こうした知見がサブナノサイズの金属粒子における多種元素の合金化へと繋がった。 3、ピリジン部位をコアに有するデンドリマーを用いることで13原子からなる金属クラスターを合成し、その超原子特性を実証した。AlCl3およびGaCl3の集積はUV-vis吸収スペクトルの等吸収点の変化から確認できた。この金属錯体を還元することで、13族元素からなる13原子の超原子を初めて液相で合成した。その特性を電子顕微鏡やX線光電子分光、電気化学測定から明らかとした。
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