本研究代表者は、補酵素NAD(Nicotinamide Adenine Dinucleotide)におけるNAD+/NADH型の再生可能な有機ヒドリド生成能に着眼し、光エネルギーによって再生可能なヒドリド源を配位子内に組み込んだ様々な金属錯体を合成し、二酸化炭素再資源化反応の開発に取り組んできた。本研究である「光再生可能な有機ヒドリドの自在制御に基づく二酸化炭素多電子還元錯体触媒の開発」は、NADモデル配位子のπ共役系に着目した新しい分子設計を施したNADモデル配位子を有するルテニウム(Ru)錯体による、光エネルギーにより再生する有機ヒドリドのヒドリド供与能自在制御に基づく高効率な二酸化炭素からメタノールへの6電子還元反応の創成を志向しており、(1)光エネルギーにより有機ヒドリドを貯蔵したNADH型錯体におけるヒドリド供与能の向上、(2)基質結合部位を有する新規錯体の合成と光有機ヒドリド貯蔵反応特性の解明および二酸化炭素や二酸化炭素還元中間物質との反応性の検討、を各種分光学・光化学・電気化学的測定等、多面的な測定手法を駆使し、研究目的達成を目指す。本年度(平成31年度)では、平成29年度や平成30年度で得られた知見を基盤とし、NADH型錯体であるRu-pnHH錯体の各種物性や二酸化炭素との反応性に関し、知見を得ることができた。さらには、新たなNAD+型配位子であるPh-pn配位子を合成でき、この配位子を有するRu錯体の合成・X線結晶構造解析に成功するだけではなく、NAD+型からNADH型への光有機ヒドリド貯蔵反応特性に関しても明らかにすることができた。
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