研究課題/領域番号 |
17K05810
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中本 有紀 大阪大学, 基礎工学研究科, 技術専門員 (90379313)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高圧 / 超伝導 / 構造相転移 / アルカリ土類金属 / X線回折 |
研究実績の概要 |
実験手法及び計算機環境の整備をおこない、アルカリ土類金属の結晶構造について調べた。ストロンチウムについてSPring-8での低温・高圧下での放射光を用いたX線回折測定により温度-圧力相図を作成してきた。これまでに知られていなかった低温領域でのみ存在する新しい高圧相の存在を見出しこの相をSr-VI相と名付け、この相が現れるのは低温下で圧力を印加するという実験パスに依ることも明らかにしてきた。今年度は、我々が圧力発生装置の開発で400 GPaの圧力発生に成功した高圧装置を用いて、さらに圧力領域を拡大し、ストロンチウム、カルシウムについてX線回折測定および電気抵抗測定をおこなった。得られた結果は以下のとおりである。 1、ストロンチウムについて我々が新しく構造相転移を見出した低温・高圧相(Sr-VI)について、電気抵抗測定を行なうことに成功した。この相は既に報告されていた超伝導転移温度の最高値を上回る値(10K)をもつ。さらに200 GPaまでの高圧力下での放射光を用いたX線回折実験と電気抵抗測定に成功し、160 GPa以上の高圧力下では、また新たなる高圧相を見出した。得られたX線回折パターンを解析することでその結晶構造はhcp構造(Sr-VII相)であることを明らかにした。この高圧相の超伝導転移温度はさらに高い13 Kを示す。 2、元素で最も高い超伝導転移温度(Tc=29 K)をもつカルシウムにおいては、350 GPaまでの超高圧力領域で放射光を用いたX線回折測定を行ない、また電気抵抗測定との同時測定を行なった。50 Kでの低温下で圧力を印加するという実験パスでは結晶構造の変化は確認できなかったこと、また高い超伝導転移温度は確認できなかったことから、50 K付近では室温ですでに報告されている結晶構造相が保たれている可能性がある。それにより、おおよその相境界を見積もることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究として他グループによって報告のあったバリウムに存在する高圧下低温相が、ストロンチウムにおいても存在することを明らかにし、その超伝導転移温度は室温で現れる高圧相の超伝導転移温度よりも高い値を示すことを明らかにした。またさらなる高圧下で新しい結晶相の存在も明らかにし、この結晶相の構造を決定することができた。これらのことから本研究課題の主目的であったアルカリ土類金属に類似の結晶構造相転移のシークエンスをもつことを示したことになる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究でストロンチウムにおいて見出した新しい低温・高圧相(Sr-VI相)の結晶構造の決定をおこなう。100 GPaを超える超高圧下および50Kの低温で得られるX線回折パターンは、微少試料であること、また静水圧性も低いことなどから回折強度が非常に弱くブロードであり、また回折ピークが多く複雑であるので結晶構造の決定が困難であり未だ構造の決定には至っていない。今年度は質の良いパターンを得てその結晶構造を明らかにしたい。併せて論文発表をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請課題の実験については予定通り終了しているが、得られた実験結果の追加解析とその成果報告のための論文投稿及び学会発表の為。
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