元素の中で高い超伝導転移温度を示すアルカリ土類金属について、超伝導転移温度と結晶構造の関係を知ることでその発現機構を明らかにすることを目的としている。実験手法及び計算機環境の整備をおこない、特にストロンチウムに着目して結晶構造と超伝導転移温度の関係を検証する。 これまで超高圧・低温下のX線回折実験と電気抵抗測定の手法、及び計算機環境の整備をおこない、アルカリ土類金属の結晶構造について研究を行ってきた。低温でかつ特に100 GPaを越える超高圧下という極端条件では試料サイズが十数μmφ程度と非常に微少であることから、輝度が高くまたそのビーム径を数μmφに集光された放射光を用いた粉末X線回折測定を行ってきた。ストロンチウムについては前年度に加えて様々な実験の温度・圧力パスでの測定を行うことで詳細な温度-圧力相図を作成した。本研究で初めて低温領域でのみ存在する新しい高圧相(Sr-V)を見出した。これは100K以下の低温で圧力を印加するという実験パスでのみ現れる高圧相である。またこの相は、既にストロンチウムで報告されていた超伝導転移温度よりも高い超伝導転移温度を示すことも明らかにした。加えてSr-VI相の高圧相としてhcp構造をもつ新たなる結晶相(Sr-VII)の存在も発見し、安定領域についても検証した。これらのことは元素で最も高い超伝導転移温度をもつカルシウムについても更に高い超伝導転移温度をもつ低温高圧相の存在、またさらなる超高圧相の存在を示唆する結果を得たことになる。
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