研究課題/領域番号 |
17K05813
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
有川 康弘 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (30346936)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 亜硝酸イオン / ニトリド / 還元サイクル / 一酸化窒素 / アンモニア / 二核錯体 / ピラゾリルボラト / ルテニウム |
研究実績の概要 |
我々はこれまで、窒素循環サイクルの一部である一酸化窒素還元酵素(NOR)に着目し、二核ルテニウム錯体を用いてNO還元サイクルを達成した(2NO + 2H+ + 2e- → N2O + H2O)。本研究では、同じ二核ルテニウム錯体を反応場とし、亜硝酸還元酵素(NIR)の機能である亜硝酸イオン(NO2-)からアンモニアへの変換(NO2- + 7H+ + 6e- → NH3 + 2H2O)を合成化学的に達成させることを目的とする。また、触媒反応への展開も試みる。 我々はすでに亜硝酸イオン還元サイクルの一部である、ニトリト架橋錯体からNO架橋錯体およびNO架橋錯体からニトリド架橋錯体への変換を達成している。そのため、最終ステップであるニトリド架橋錯体からニトリト架橋錯体への変換反応に専念した。 DFT計算(LUMOの軌道)からも示唆されているように、ニトリド架橋錯体は還元により、窒素上の塩基性の増加が予想される。そのため、ニトリド架橋錯体への還元およびプロトン化により、アンモニアへの変換が容易になると思われる。そこで、ニトリド架橋錯体の還元およびプロトン化を行った。様々な反応条件を検討した結果、CH2Cl2中ニトリド架橋錯体を還元剤として[Cp*2Fe]およびプロトン化剤としてHBF4を用いて反応させたところ、アンモニアの発生を確認した(収率41%;インドフェノール法で定量)。さらに、[nBu4N][NO2]存在下で反応させることにより、ニトリト架橋錯体への変換を達成した。これにより、亜硝酸イオン還元サイクルが達成された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は、亜硝酸還元酵素(NIR)の機能である亜硝酸イオン(NO2-)からアンモニアへの変換(NO2- + 7H+ + 6e- → NH3 + 2H2O)を合成化学的に達成させることである。当初の計画では、その還元サイクルを2年目で達成させることとしていたが、予想以上に進展し1年目で還元サイクルが達成できたため。またその成果を学術論文で公表できたため。
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今後の研究の推進方策 |
二核ルテニウム錯体を用いた亜硝酸イオン還元サイクルを1年目に合成化学的に達成した。しかし、各ステップに関して反応機構を詳細に調査することにより、最適化の余地がある。そのため、その還元サイクルの各ステップについて詳細に調査する。 さらに、亜硝酸イオンの2つのN-O結合切断反応によって生成した架橋ニトリド配位子は、アンモニアへの変換だけでなく、N-CやN-Si、N-B結合生成などを行い、窒素含有有機分子への変換を行う。また、この窒素上の求核性を利用し、他の金属フラグメントと反応させ、異核金属クラスターの構築も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定よりも学会に参加する学生の旅費がかからなかったため、次年度使用額が生じた。使用計画としては、当初予定よりも機器(NMRによる合成物の同定)の測定料がかかっているため、測定料として使用する予定である。
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