研究実績の概要 |
本研究で取り上げるCSe, CTeを持つ遷移金属錯体は、それ自体研究例がほとんどない化合物であり、合成法も十分確立されていない。特にハーフサンドイッチ型CTe 錯体については未知である。THF中Et3B存在下、6配位錯体[RuCl2(CTe)(H2IMes)(dmap)2] (1-CTe) とCpLi (1.5 equiv) を-20 ℃で0.5時間撹拌することによりCpCTe錯体[CpRuCl(CTe)(H2IMes)] (2-CTe) を赤色結晶として収率61%で単離することに成功した。13C{1H} NMRおよびIRではCTe配位子に由来するシグナルを観測し、最終的にX線構造解析により三脚ピアノいす型構造であることを確認した。2-CTeのRuC-Teの結合長およびRu-C-Teの結合角は1-CTeのそれらとほぼ同等であり、Ru-CTeの距離はやや伸長していることが明らかになった。 1-CTeは溶液中でテルルを遊離するが、2-CTeは溶液中で安定であった。 CSe, CTe錯体の反応性についてもその知見はほとんどない。E=PR3の生成を予想して1-CEとPPh3の反応を行ったが、加温条件下でも反応は全く進行しなかった。NaBArF4を添加することで、カチオン性錯体[CpRu(CE)(H2IMes)(PPh3)][BArF4] (3-CE; E = O, S, Se) が得られた。しかし1-CTeからは対応するカチオン錯体は得られず、分解生成物を与えた。PPh3の代わりにπ酸性であるイソシアニド (CNCH2Ts) を用いたところ、一連のカチオン性錯体[CpRu(CE)(CNCH2Ts)(H2IMes)][BArF4] (4-CE; E = O, S, Se, Te) が生成した。
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