研究実績の概要 |
昨年度までに合成に成功した中性の[CpRuCl(CE)(H2IMes)]とイソシアニド配位子(CNCH2Ts)をもつカチオン性錯体[CpRuCE(CNCH2Ts)(H2IMes)]+のRu-C-Eの結合の性質について理論計算をもちいて詳細に解析した(共同研究)。中性錯体においてはRu=C=Eの、カチオン錯体においてはRu-C≡Eの極限構造の寄与が大きいことがわかった。プロトンNMRでは、イソシアニドのメチレンプロトンがジアステレオトピックのためカップリングしていることが確認できていたが、溶媒依存性があることがわかった。たとえば、[CpRuCO(CNCH2Ts)(H2IMes)]+のメチレンプロトンは、CDCl3中ではほぼシングレットとして観測されるが、(CD3)2CO中では1組のダブレットとして観測され、CO錯体からCTe錯体までルテニウム中心の立体化学の安定性が示された。 中性の(R)-[CpRuCl(CE)(H2IMes)]のラセミ化に及ぼす溶媒の影響を調べた。その結果、酢酸エチル中ではラセミ化がもっとも遅くエタノール中では速いことがわかった。 今後、Cl配位子の置換における立体化学を検討するために、ClをBrやIに置換した錯体の合成も検討した。rac-[CpRuCl(CO)(H2IMes)]とKBrやKIの反応から対応するrac-[CpRuX(CO)(H2IMes)] (X = Br, I)が得られた。I体についてエナンチオマーの分離を試みたところ、予備的ではあるが、酢酸エチルを溶媒としCl体とは異なるキラルカラムを用いることにより分離が確認された。
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