研究課題/領域番号 |
17K05818
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
中井 英隆 近畿大学, 理工学部, 准教授 (70377399)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 合成化学 / 光物性 / 酸素プローブ / ランタニド錯体 / 発光 |
研究実績の概要 |
本研究は、独自に発見した「(1)酸素応答性のランタニド錯体の中で、世界最高の91%という発光量子収率を示すテルビウム(III)錯体」および「(2)蛍光とリン光の二重発光挙動を示すガドリニウム(III)錯体」を起点に、生体内応用を可能にする酸素応答性のランタニド錯体を開発するものである。研究期間内(3年間)に、「水溶性の付与」と「機能性の付与」という生体内応用におけるハードルをクリアーし、新規な酸素プローブ創製の基礎(分子設計指針)を確立することを目指している。 平成30年度は、当初の計画に沿って、平成29年度に注力したプロトタイプとなる錯体への「水溶性の付与(重点項目1)」に加えて、「機能性の付与(重点項目2)」および「酸素応答機能の評価(重点項目3)」にも取り組んだ。 その結果、平成29年度に合成法を確立した種々の新規配位子を有する強発光性テルビウム(III)錯体およびガドリニウム(III)錯体を高収率で合成する方法を確立することができた。また、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカンを骨格とした8座のテトラアニオン配位子を有するテルビウム(III)錯体およびガドリニウム(III)錯体が、プロトタイプである7座のトリアニオン配位子を有する錯体と比べて、集光能力・酸素応答性の面で優れた性能を示すことを明らかにした。さらに、本課題で開発した配位子を用いることで、大変珍しい「酸素応答性の発光性ディスプロシウム(III)錯体」が合成できることも見出した。上記成果および本研究遂行に伴い派生した成果は、日本化学会第99春季年で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画に沿って研究を進め、本課題で開発した配位子を有する新規酸素応答性ランタニド錯体の合成方法を確立することができた。さらに、発光性ランタニド錯体の基本的な物性の一つである「集光能力」および本課題の要である「酸素応答性」の向上につながる分子設計指針を得ることができており、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、平成29,30年度に得られた知見をもとに、当初の計画通り下記に示す重点項目3を中心に研究を進める。 (重点項目3)酸素応答性機能の評価と分子設計へのフィードバック:重点項目1(水溶性の付与)および2(機能性の付与)に基づいて合成した新規発光性ランタニド錯体の基本的な物性(量子収率、発光寿命、濃度/温度/励起波長依存性等)および酸素応答機能(Stern-Volmerプロット等)を測定・評価する。得られた結果を配位子・錯体の分子設計へとフィードバックする。
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次年度使用額が生じた理由 |
納期等が年度末になってしまった試薬・物品が本年度の使用として計上できなかったためであり、経費は当初の計画通り使用している。
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