研究課題/領域番号 |
17K05820
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
御厨 正博 関西学院大学, 理工学部, 教授 (10157472)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | スピン量子数 / 二核錯体 / 少数核錯体 / 多核錯体 / 磁気的相互作用 |
研究実績の概要 |
基底項スピン量子数がS = 0からS = 1までについて銅(II)、ニッケル(II)、モリブデン等の二核錯体を合成し、それぞれの磁気特性を明らかにした。モリブデン錯体では密度汎関数計算により2個のモリブデン(V)のS=1/2スピンが金属ー金属結合によりS=0状態となっていることを確認した。非対称二核形成配位子を用いて不完全キュバン型4核ニッケル(II)錯体を合成し、強磁性的相互作用を観察した。また合成条件の違いにより単核ニッケル錯体も単離した。シッフ塩基の二核ニッケル(II)錯体ではスイッチング機能を付加した系を追究した。アジ化物イオンで連結した1次元鎖状型の銅(II)多核錯体の磁気的性質も調べた。磁気的相互作用の違いによってBoner-FisherモデルやBakerモデルが適用できた。S = 3/2スピン系として第一遷移系列元素の中でも磁気異方性が強いコバルト(II)について正八面体型や正四面体型コバルト(II)単核錯体について磁気的性質を調べた。正八面体型錯体では対称性の歪みが相転移を起こす可能性が見出された。第二遷移系列元素のルテニウム混合原子価二核についても新規錯体を合成し、S = 3/2スピン系としての二核ユニットの結晶構造・磁気異方性に関する情報を集めた。S = 2やS = 5/2の系については混合原子価のマンガン三核錯体を合成し、強磁性的相互作用を見出した。鉄(III)単核錯体の磁気的特性を調べ、対称性との関連性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画した金属錯体のうち合成できなかったものもいくつかあるが、多くのものを合成することができた。多くの場合、結晶構造を明らかにすることができた。磁気的特性についても調べ、結晶構造との相関関係も調べることができた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の計画が概ね進行しているので、次年度の計画通りに進める。合成した単核金属ユニットや二核金属ユニットについて連結配位子との反応を行い、一次元、二次元、三次元集積化を行う。高スピン型コバルト(II)では二核から三核、四核、六核と核数を増やして行った場合にも単核錯体で見られたような磁気異方性がどのように観測されるか注目する。併せて単分子磁石としての可能性も探る。連結配位子としては、ピラジン類やキノン類等の二座配位の有機配位子、ニトロニルニトロキシドのような有機ラジカル配位子、シアニド金属酸イオンのような錯体配位子を用いる。さらに軸不斉連結配位子を用いることにより磁性にキラルな特性の導入も試みる。ルテニウム二核ではタングステン酸塩、レニウム酸塩などの5d金属塩との反応を行い、新しい異核集積型金属錯体を合成する。これをマンガン、鉄、コバルトの系にも適用し、ルテニウム二核の場合との比較検討を行う。この際、連結配位子の配位を容易ならしめるよう単核金属・二核金属・少数核金属ユニット内の配位子場の強さを調節し、また連結配位子の特性を活用して、集積の次元性や方向性制御を行う。
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